頼清徳・総統は10日、双十節（建国記念日、10月10日）式典の演説で、「中華人民共和国は台湾を代表する権利はない」と表明した。5月20日の就任演説に続き、中華民国は台湾、澎湖、金門、馬祖に根を下ろしており、中華人民共和国と互いに隷属しないと説明した。総統としての使命は、国家の生存と発展を維持し、2300万人の台湾の人々を団結させ、国家の主権を守ることで、侵犯や併合を許さないと述べ、中国を牽制（けんせい）した。中国の外交部や国務院台湾事務弁公室（国台弁）は同日、頼・総統の発言には両岸（中台）の歴史的なつながりを絶ち切る意図があり、台湾独立（台独）への頑なな立場を再び露呈したと批判した。11日付聯合報などが報じた。

頼・総統は10日、互いに意見や立場が違えど、ともに手を取り合い前進してきたからこそ、今の中華民国台湾があると述べた（10日＝中央社）

　頼・総統は双十節の式典の演説で、われわれは1949年の古寧頭戦役（国共内戦での金門島を巡る戦い）、1958年の金門砲戦（823砲戦、第2次台湾海峡危機。中国軍の金門島砲撃から始まった砲撃戦）と、台湾、澎湖、金門、馬祖を守り、中華民国を守り抜いてきたと述べた。われわれが自分の国家を、中華民国、台湾、中華民国台湾など、どのように呼んだとしても、信念は共通しており、▽国家主権を守る決意、▽台湾海峡の平和と安定、現状を維持する努力、▽両岸の対等と尊厳、健全な秩序ある対話と交流の約束を望むこと、▽民主主義と自由な生活を守ること──は変わらないと、団結を呼び掛けた。

　頼・総統は中国に対し、台湾は台湾海峡の平和と安定を守り、世界の安全と繁栄をもたらす決意があり、中国の気候変動や感染症予防に協力する意思があると語った。国際情勢の緊張が高まる中、毎日罪のない人々が戦火で命を落としていると指摘した上で、中国が国際社会の期待に応え、世界各国と協調し、ウクライナ侵攻や中東軍事衝突を終わらせ、台湾とともに国際的な責任を果たし、地域と世界の平和と安全、繁栄に貢献することを呼び掛けた。

　頼・総統は5日の双十節イベント「国慶晚会」のあいさつでは、中華人民共和国は10月1日に建国75年を迎えたばかりだが、中華民国はまもなく113年を迎えると述べ、中華人民共和国は中華民国の人々の祖国には絶対になり得ないと語った。9月下旬には、国際連合（国連）総会に合わせて開催された非営利団体（NPO）のサミットで、ビデオメッセージを通じ、中国は国連における中華人民共和国の代表権を認めた1971年の国連第2758号決議（アルバニア決議）を悪意をもって歪曲（わいきょく）していると批判した。国際社会に対し、中華民国と中華人民共和国は異なり、互いに隷属しないことを繰り返し訴えている。

■中国、「新二国論」を批判

　中国外交部の毛寧・報道官は10日、「一つの中国原則」は国際関係の基本原則で国際社会の共通認識（コンセンサス）だと指摘した。台湾はもとより一つの国ではなく、絶対に一つの国になり得ず、いわゆる主権はそもそも存在しないと強調した。

　中国で対台湾政策を担う国台弁の陳斌華・報道官は同日、頼清徳は「互いに隷属せず」という「新二国論」を吹き込み、台湾独立の論理を編み出し、両岸の敵意と対抗を煽っていると批判した。

　国防部の発表によると、頼・総統の演説の前日に当たる9日（10日午前6時までの24時間）は、中国軍の軍機延べ27機が台湾周辺の空海域で活動し、10日（11日午前6時までの24時間）は中国軍機20機が活動した。通常よりやや多かった。

■馬英九・元総統は欠席

　双十節の式典には、蔡英文・前総統や陳水扁・元総統、韓国瑜・立法院長（国民党）、朱立倫・国民党主席らが出席した。馬英九・元総統（国民党）は急遽、欠席した。

蔡・前総統（左）や陳・元総統（右）が10日、双十節式典に出席した（10日＝中央社）

　海外からは、友好国や国交がない国を合わせ来賓183人が出席した。日本からは、超党派の議員連盟、日華議員懇談会（日華懇）の山東昭子参議院議員（自民党）ら5人が出席した。

【セミナー情報です】
在台日系企業の経営改革を体験する！日本人経営者、経営幹部向け、ワイズ経営塾　経営実践編。合理的な経営意思決定の方法を学びたい方にオススメです。10月22日開講。
検索は「ワイズ、経営実践編」。
【セミナー情報の詳細はこちら】
https://www.ys-consulting.com.tw/seminar/111179.html