女子大学院生が三角関係のもつれからクラスメートを殺害し、台湾社会に激しい衝撃を与えたのは1998年のこと。同事件で殺人罪で18年の実刑判決を受けて服役していた洪暁慧・元受刑者(33)が3日仮釈放され、10年8カ月ぶりの自由を得た。
洪元受刑者の仮釈放は実家に帰るまでをマスコミが追跡した。今後、英文翻訳の仕事で賠償金を支払っていきたいという(3日=中央社)
洪元受刑者は白いスポーツウエアに身を包み、黒いキャップと黒ぶちの眼鏡、大きなマスクで顔を隠し、高雄女子監獄の門を出た。待ち構えた多くのメディアを前に、「世間を騒がせて申し訳ありませんでした。許家の方々に深い悲しみを与え、本当に申し訳ありませんでした。これからはまっとうな人間になります。私に生まれ変わるチャンスを与えてくださった社会に感謝しています。ありがとうございました!」と声を震わせた。
この事件は、名門の国立清華大学(新竹市)で発生。同大輻射生物研究所の大学院生だった洪元受刑者(当時23)は、大学院の先輩、曽煥泰さん(当時29)をめぐってクラスメートで親友の許嘉真さん(当時24)と恋の三角関係に陥っていた。
洪さんと許さんは3月7日、研究所の講堂で話し合いをしたが決裂。カッとなった洪元受刑者は許さんを平手打ちし、反撃しようとして転倒した許さんの頭部をつかんで床に打ちつけた。許さんは出血多量で意識不明になり、洪元受刑者は許さんを講堂のクーラーの後ろに隠した。さらに翌朝現場に戻り、遺体に「王水」(濃塩酸と濃硝酸を混合した液体)をかけて、身元判別を困難にした。その上、自分が過去に曽さんと性交した際の使用済みコンドームを死体のそばに捨て、レイプ殺人事件に見せかける偽造工作までした。
あれから約11年。青春時代を獄中で過ごした洪さんには、2,417万台湾元(約6,700万円、利息を加えると3,600万元あまり)に上る許家への賠償金の支払いが残されている。彼女の最大の願いは、被害者の家族の許しを得ることだという。