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AUO・群創、勝ち残りに太鼓判


ニュース 電子 作成日:2008年12月8日_記事番号:T00012118

AUO・群創、勝ち残りに太鼓判

 
 空前の不景気にある台湾液晶パネル業界で、生き残りを果たせるメーカーはどこか。証券会社が今注目しているのは帳簿上の現金と今後1年以内に償還すべき負債総額で、それによると、手持ち現金の多い友達光電(AUO)と群創光電(イノルックス・ディスプレイ)の2社が最も有望だ。奇美電子(CMO)は世界的大手グループからの脱落、中華映管(CPT)に至っては資金不足による倒産の観測すら出ている。経済誌「今週刊」の最新624号が報じた。
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 AUOの第3四半期の帳簿上の現金は888億5,300億台湾元(約2,450億円)と、パネル業界で群を抜いて多い。一方、今後1年以内に支払い期日を迎える負債総額は471億2,300万元で、現金から負債総額を引いても417億3,000万元の現金が残る計算で、厳冬期をしっかり乗り切れそうだ。
 
 モルガンスタンレー証券の王安亜アナリストによると、過去10年、AUOと奇美電の資本支出はほぼ同水準だったが、AUOは資本支出の約2倍の売上高を挙げることができた。一方、奇美電の実績は資本支出の約6割程度で、AUOの経営効率は奇美電の3倍優れていると言える。この差は主に、AUOが広輝電子(クアンタ・ディスプレイ)など2回の合併で規模を拡大した一方、奇美電は大部分自己資金で賄ってきたことにある。AUOの新規生産能力は多くが景気回復時に稼働が始まった一方、奇美電は逆に景気下降局面に生産能力を増強したケースが多いことも一因だ。
 
 群創も手持ち現金が561億4,000万元とAUOに次いで多く、今後1年以内の負債総額は281億7,600万元で、差し引きで279億6,400万元と十分だ。証券業界ではAUOと群創の2社を「生き残り可能なメーカー」とみており、現在の不景気が終了する際の株価上昇に期待を寄せている。特に群創は昨年の高値約165元から現在8分の1の20元前後まで下落しており、果たして谷底に達するのはいつなのかが関心を集めている。
 
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奇美電、「華映の二の舞」か
 
 奇美電は手持ち現金が507億6,200万元、1年内の負債総額は424億600万元で、余剰金は83億5,600万元とAUOの5分の1の水準だ。同社については少なくないアナリストが、来年、再来年の大幅な損失を予測している。最も悲観的なのはJPモルガン証券・林良俊アナリストによる「来年717億元、再来年294億元」という赤字予測で、林氏は奇美電は今後数年間投資余力を失い、大手グループから脱落するとみている。これは、中華映管が05年以降にたどったのと同様のコースだという。
 
華映、悲観論に反発
 
 業界で最も先行きが懸念されているのは、株価が創業以来最低の2元台まで落ちた中華映管だ。同社は手持ち現金が208億6,500万元、一方、1年以内の負債総額は400億5,200万元とほぼ2倍で、差額はマイナス191億8,700万元に達する。今後資本を増強できるかが生き残りの鍵で、多くのアナリストが「金融危機の衝撃で最初に倒れるパネルメーカー」と名指ししている。
 
 ただ、これに対し、巫俊毅同社財務長(CFO)は、1年以内とされている債務は昨年発行した1億4,000万元の社債、および戦略パートナーのウォーバーグ・ピンカスが引き受けた2億5,000万米ドルの社債(約84億元)が大部分で、出資による利益獲得が目的である以上、直ちに償還を求められることはなく、実際の期日にはまだ5~6年あると反論。純負債比率も今年は50%と前年の65%から改善し、奇美電の74%よりも良好で健康な水準にあるなどと指摘し、「一体何を心配しているのか」と倒産説を一蹴した。
 
台湾業界自体に不安
  
 AUOは台湾パネル業界の中では「勝ち組」となれるようだが、日韓との競争では台湾の業界自体が厳しい状況を迎えつつある。
 
 液晶テレビ業界では生き残りをかけて大手メーカーによる提携が加速しつつあり、ソニーはサムスン電子に次いで、シャープと合弁のパネルメーカーを立ち上げることで合意しており、同社からの調達を強化する。サムスン、シャープ、LG、フィリップスは自社および提携先のパネル採用を優先するため、台湾パネルメーカーはこれらのメーカーにとっての役割が従来に比べて低下していくとみられる。サムスンとLGがパネルの相互調達を行うようになったのも大きな痛手だ。
 
 台湾パネルメーカーはモニター用パネルの生産が多いことも構造的問題として挙げられる。モニターは既に成熟製品で成長率が低い。一方、韓国メーカーは需要の高いテレビ用パネルの生産が多い。この結果、拓ボク産業研究所(ボクはつちへんに僕のつくり)によると、サムスンの今年第3四半期から来年通年の四半期当たりの生産能力利用率は最低でも95%、LGディスプレイ(LGD)は90%までしか低下しないとみられる一方、AUOと奇美電は最低60%台まで下がると予想されている。
 
【表】【図】