ニュース 公益 作成日:2025年8月14日_記事番号:T00123493
5月17日に台湾電力(台電、TPC)の第3原子力発電所(屏東県恒春鎮)が運転を停止し、「原発ゼロ」となった台湾で23日、第3原発再稼働の是非を問う住民投票が行われる。民進党主席(党首)を兼ねる頼清徳・総統は13日、原発の安全は科学の問題であり、住民投票では解決できないと述べ、不同意票を投じるよう訴えた。最大野党、国民党の朱立倫・主席は、経済の生命線を守るため同意票を投じようと呼びかけた。14日付聯合報などが報じた。
頼・総統は民進党の中央常務委員会で、23日に住民投票に行き、一緒に原発再稼働に不同意票を投じようと呼びかけた(13日=中央社)
住民投票の設問は「主管機関が安全に懸念がないことを確認した後、第3原発の運転継続に同意するか」というもので、第2野党の台湾民衆党が提案した。18歳以上の有権者が投票して、有効な同意票が有権者数の4分の1以上となり、かつ同意票が不同意票を上回れば成立する。成立した場合、総統または権限を有する機関が実現するために必要な措置を講じなければならない。
頼・総統は、民進党の中央常務委員会で、原発再稼働の是非を決めるには手続き上、核能安全委員会(核安会、旧・行政院原子能委員会)が法に基づき安全審査の規定を定めること、TPCが核安会の定めた規定に基づき自主安全検査を行い、再稼働の安全条件、スケジュール、コストを評価すること、という2つの必須条件があると指摘した。
その上で、政府は、▽原発の安全に問題がないこと、▽核廃棄物に解決策があること、▽社会的合意があること──という3原則に基づいて慎重に対応すると強調した。安全検査がまだ実施されておらず、市民がリスクやコストの情報を十分理解する前に住民投票をしても、市民がどれだけリスクを負う覚悟があるかは確認できないとして「不同意票を投じよう」と呼びかけた。
■「原発再稼働でTPC赤字解消」
一方、国民党の朱・主席は中央常務委員会で、政府が発電コストが低い原発の稼働を停止する一方、固定価格買い取り制度(FIT)で再生可能エネルギー電力を調達することで、TPCが赤字になっていると批判した。再生エネルギー電力調達の固定価格買い取り制度をやめる上、原発再稼働に同意票を投じることで、電気料金を下げられると主張した。
TPCによると、25年上半期(1〜6月)の原発の発電コストは1キロワット時(kWh)当たり1.98台湾元(約10円)に対し、経済部の固定価格買い取り制度を基に調達した太陽光発電、洋上(オフショア)風力発電の調達コストはそれぞれ1kWh当たり4.81元、6.58元だった。
台湾では、2011年の東日本大震災の福島第一原発事故をきっかけに、脱原発ムードが高まり、16年に脱原発を公約に掲げた民進党の蔡英文氏が総統選挙で当選した。
18年に電気事業法の「原発の運転を25年までに全て終了する」と明記した条項の廃止の是非を問う住民投票が行われ、同意が不同意を上回って成立し、条項は廃止されたが、民進党政権は揺るがず、今年5月17日の脱原発に至った。
反対運動の高まりで15年に建設を停止した第4原発(新北市貢寮区)の凍結解除の是非を問う住民投票が21年に行われたが、不同意が同意を上回って否決され、第4原発は再開しなかった。
今回の住民投票を提案した民衆党の黄国昌・主席は、頼・総統発言について「住民投票で解決できないなら、投票に行くのは無駄ではないか」と皮肉った。第4原発稼働の是非は住民投票で決めるべきだという頼・総統のかつての発言を引き合いに出し、第3原発再稼働の是非も全住民の判断に委ねるべきだと述べた。
■23日はリコール投票も
住民投票が行われる23日には、国民党の立法委員7人について罷免(リコール、解職)の是非を問う投票も7つの選挙区で実施される。
中央選挙委員会(中選会)は13日から23日午後4時の投票終了まで、リコールに関する世論調査の結果発表や分析を禁止すると発表した。住民投票に関する世論調査については同様の禁止規定はないが、投票日当日に住民投票の世論調査結果を利用して罷免の宣伝活動を行うことは認められないと説明した。
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