ニュース 法律 作成日:2025年10月27日_記事番号:T00124886
知っておこう台湾法台湾の民法1030条の1第1項では、離婚時に、夫と妻の剰余財産に差がある場合、その差額を等分して分配しなければならないとされています。ここでいう剰余財産とは、離婚時に、夫または妻の「現存する婚姻後の財産」から、婚姻関係継続中に生じた債務を控除した後の残額を指します。
■退職金は含まれるか
この「現存する婚姻後の財産」にまだ受領していない退職金が含まれるかどうかについては争いがあり、労働基準法(労基法)に規定される退職の要件を満たしている場合であってもまだ実際には退職していない場合には将来受け取ることができる退職金は、「現存する婚姻後の財産」ではないと判断する裁判例(否定説)が存在しました。
しかし、2025年8月21日、最高法院は、この点について、肯定説を採用し、法律解釈を統一する旨を判示しました(112年度台上字第2397号民事判決、以下「本件判決」といいます)。主な理由は以下のとおりです。
・労働者が労働基準法の規定による法定の退職条件を満たす場合、退職金を請求することができ、労働者がその後退職したとしても消滅せず、当該退職金給付は将来確実に取得できる財産であり、受領前に既に財産権の地位を有し、労働者の既得の権利である。
・退職金の金額は労働者の勤続年数の累積と関係しており、その累積が夫婦の婚姻存続期間における協力・貢献に基づくものである場合、夫または妻の現存する婚姻後の財産とみなすべきであり、一身専属性を有することを理由に異なる扱いを受けるべきではなく、これこそが公平にかなうものである。
■労働基準法適用の場合
本件判決の趣旨からすると、剰余財産の分配時においてまだ労働基準法上の退職の要件を満たしていない場合には判断が異なる可能性があるためご留意ください。また、本件判決は退職金の計算等について労働基準法が適用されるいわゆる旧制度に関するものであり、2005年7月1日以降に入社した社員に適用されるいわゆる新制度の場合には判断が異なる可能性があるためご留意ください。
*本記事は、台湾ビジネス法務実務に関する一般的な情報を提供するものであり、専門的な法的助言を提供するものではありません。また、実際の法律の適用およびその影響については、特定の事実関係によって大きく異なる可能性があります。台湾ビジネス法務実務に関する具体的な法律問題についての法的助言をご希望される方は弊事務所にご相談下さい。
福田優二弁護士
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