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AUOと奇美電、合併説を一蹴


ニュース 電子 作成日:2008年12月25日_記事番号:T00012533

AUOと奇美電、合併説を一蹴

 
 奇美集団の創業者、許文龍氏が、傘下の液晶パネル業界2位の奇美電子(CMO)が合併対象となることを視野に、「パネル業界の再編は、政府が適切な時期に主導すべき」と発言したことが波紋を呼んでいる。奇美電を合併できる可能性が最も高いのは最大手の友達光電(AUO)で、業界では早速「韓国勢を抜く世界最大手の誕生か」という観測も出たが、当のAUOと奇美電はこれを一蹴した。25日付工商時報が報じた。
 
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 AUOの幹部は許氏の発言に対し、「メーカーの数、生産能力が過剰なのは事実で、適切な合併が行われれば市場秩序の改善に貢献するだろう」と語りつつ、「実際は現在、大手・中堅を問わず受注激減に頭を悩ませており、自社のことで精いっぱいだ。限りある手持ちの現金を費消してまで合併を推進する余裕がどこにあるだろうか」と指摘。奇美電との合併を推進する考えはないとした。

 25日付経済日報によると、AUOは24日夜、「当社は台湾パネル業界で唯一他社を合併した経験と能力を持ち、合併には一貫してオープンな姿勢で臨んでいる」という公式発言を行った。

 しかし、AUO幹部は「2006年11月に広輝電子(クアンタ・ディスプレイ)を合併したときと現在では状況が違う」と語る。広輝電子は当時、最大で第6世代の計3工場しか有していなかったが、奇美電は5、5.5、6、7.5、さらに計画中の8.5の各世代の計8工場を持っている。生産ラインの世代と製品はAUOと大差ないため、この幹部は「合併したところで、リストラや工場閉鎖以外にできることはないだろう」と指摘した。

 一方、奇美電は広報担当者が、「現在、業界は何とか不景気を乗り切ろうと努力しているところだ。合併を行えば従業員と生産能力が激増し倒産してしまう」と語り、現時点では視野に入れていないと強調した。

企業文化が障害に
 
 工商時報はパネルメーカーの合併について、「現状ではいかなる形であれ困難」と論じている。

 AUOと奇美電の組み合わせは、企業文化と経営モデルの違いが障壁になる。AUOは専門の管理職が経営陣を構成し、経営層の持ち株比率が低い一方、奇美電は奇美実業が35%を出資する家族的色彩の強い企業だ。仮に両社が合併した場合、奇美実業が大株主となって経営権を握ることになり、AUOがこれを受け入れる可能性は低いとみられる。

 群創光電(イノルックス・ディスプレイ)は鴻海集団に属しているため、奇美電買収の可能性はある。しかし、現在奇美電は740億台湾元(約2,030億円)で買収できるとはいえ、同社は3,000億元の負債を抱えているとされリスクが高い。さらに、群創は自社の液晶モニターに一定程度供給できるパネルの生産能力を持ち、景気の良いときは不足分を他のパネルメーカーから補い、悪いときは自社パネルのみで対応するいわゆる「群創モデル」を強みとしてきた。奇美電を買収した場合、このモデルも崩れてしまう。

DRAM再編の優先度が上
 
 許文龍氏の発言に対し尹啓銘経済部長は、「メーカーにその意欲があれば、政府は仲介役を果たす」と語り、まずメーカー側の意向が前提という考えを示した。

 なお、経済部のある幹部は、「パネルメーカーは今年第3四半期まで利益を計上しているが、DRAM業界は昨年第4四半期から損失を計上しており、パネルはDRAMほどには早急な政府の救済が必要なようには見えない」と語り、DRAM業界の再編の方がより緊急性が高いという見解を示した。
 
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