5日付経済日報が報じたところによると、6日に自社ブランド「LUXGEN」(納智捷)創設を正式発表する裕隆集団が、中国の自動車メーカーと提携して低所得者層をターゲットに35万台湾元(約98万円)以下の低価格車専門ブランドの立ち上げを計画しているという観測が持ち上がっている。台湾自動車市場に「国民車」誕生となるかに注目が集まる。
中国の部品、台湾で製造
裕隆上層部の構想によると、新ブランドの提携相手として想定しているのは中国・吉利汽車(浙江省)で、吉利汽車が得意とする低価格小型車用部品を採用し、裕隆の三義工場(苗栗県)で組み立てて台湾で販売するという。ただ販売経路は従来とは異なり、裕隆傘下で自動車補修やレンタカー、中古車売買などカーライフ支援サービスを行う「行遍天下」や、中華汽車工業傘下のディーラー、匯豊汽車が組織した中古車販売ネットワーク「SUM(尚盟)中古車聯盟」などを利用してコスト低減を図る計画だ。
消息筋によると、裕隆は吉利汽車の▽優利欧▽美日▽自由艦▽金鷹▽金剛──など1,000cc~1,500cc小型セダンの導入を検討しているという。これら車種の中国での販売価格は3万3,800~5万3,800人民元(約45万5,000~72万3,000円)で、裕隆の望む「35万台湾元、粗利益7%以下に抑える」という条件に合致するという。
経済日報によると、現在台湾には40万元を切る製品は皆無で、一昨年裕隆がマーチの生産を停止として以来、1,500ccクラス以下の入門車種も存在しない。裕隆では、「足代わり」を主要用途とする消費者をターゲットとしており、最終的な販売台数が大きくは膨らまないとしても、5,000~1万台を販売できれば、現在落ち込んでいる生産能力利用率を引き上げ、全体の経営コストを抑えるという目的は達成することができるという。
「中国車」が台湾初上陸へ
裕隆集団の国民車計画が実現すれば、台湾市場で「中国車」が販売される初のケースとなる。業界関係者によると、現在のところ中国製の「完成車」輸入は禁じられているが、部品の輸入は認められている。また、台湾が世界貿易機関(WTO)に加盟して国産車の自製率規定を撤廃して以降、裕隆は部品の大部分を中国から輸入しており、低価格車を組み立てて販売することは不可能ではないという。
吉利汽車は香港上場の純粋な民間企業で、昨年の乗用車販売台数は中国第9位、自社ブランドを持つメーカーとしては政府系の色合いが濃い奇瑞汽車に次いで2位だった。同社の昨年の新車販売台数は、台湾全体の販売台数に近い約20万台と予想されている。
【表】