業績不振が続く液晶パネル業界で、2位の奇美電子(CMO)が1月、受注急増によって半年ぶりに増収に転じた。1月の連結売上高は、前月比5.71%増の112億3,100万台湾元(約304億円)。一方、最大手の友達光電(AUO)は同10.1%の減収だった。中国で幅広く展開する奇美電は、中国政府による農村への家電普及に向けた「家電下郷」プロジェクトの全国拡大などが有利に働き、いち早く業績低迷から脱することができそうだ。10日付経済日報などが報じた。
1月の急な受注増に、奇美電は準備在庫で対応できた。同社は今後の見通しについては、「需要は以前より回復しているが、まだ楽観できない」と慎重な見方を示している。
1月の出荷枚数は、大型パネルが前月比9.5%増の340万8,000枚、中小型パネルが前月比75.4%増の560万8,000枚だった。
8.5世代工場、一時中断を表明
奇美電は9日、第8.5世代工場の量産時期の延期、および同計画の人員を既に他の工場などに振り分けたことを明らかにした。AUOが下半期に8.5世代工場で量産開始を予定しているため、奇美電は新世代のパネル工場建設でAUOに一歩リードを許すことになる。 市場関係者からは、奇美電の8.5世代工場計画小組(グループ)は既に解散しており、同計画は事実上中止になったとの指摘も上がっている。アナリストは、奇美電は昨年第3四半期から赤字が続いており、純負債比率が70%以上に上っていることから、1基に1,000億元以上かかる8.5世代工場計画を今後進めていくのは困難だと指摘した。
奇美電は12日に業績説明会を予定しているが、アナリストの予想では、昨年第4四半期の損失額は250億元前後まで拡大しそうだ。
AUO、10%減収
AUOの1月連結売上高は、前月比10.1%減の132億4,500万元で、2005年2月以来で最低だった。大型パネルの出荷枚数は、前月比23.5%減の323万枚、中小型パネルは2.2%減の963万枚だった。AUOは、1月は春節(旧正月)で稼働日が少なく低調な業績だったが、2月からは売上高、出荷枚数ともに成長が見込めるとしている。
外資系アナリストの予測では、2月のモニター向けパネルは、オファー価格の上昇が期待できるものの、コストと同水準までの回復にとどまる見込みだ。そのため、奇美電とAUOは、第1四半期も本業では赤字を免れられない見通しだ。
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