総額110億台湾元(約294億円)の転換社債が満期を迎え、財務危機の瀬戸際に立たされている中堅DRAMメーカー、茂徳科技(プロモス・テクノロジーズ)に対し、債権銀行団8行は16日、約10時間に及ぶ協議の末、30億元(期間1年、年利3%)のシンジケートローン(協調融資)提供に同意した。ただし、償還資金が不足するようであれば融資を実行しないという条件付きで、プロモスによる償還期限延期交渉や融資以外の資金調達の推移を見守る考えだ。このため、償還金の入金日である来週23日まで予断を許さない状況が続く。17日付経済日報などが報じた。
張秀蓮・台湾銀行董事長は、「企業救済と債権確保のダブルウィンを目指す」と方針を語った(16日=中央社)
キングストンが離脱表明
プロモス債権行による協議への参加者によると、協議開始から約3時間後、陳民良プロモス董事長が「連帯保証人になる」と発言すると、これまでプロモスへの追加融資で15億元の保証を引き受けるとしていたキングストン・ファーイーストが突然、連帯保証人を降りると表明した。これを受けて銀行団は、当初50億元で計画していた融資額を25億元に引き下げる考えを固めたという。
50億元を償還資金に
しかし、プロモスの財務顧問を担当するシティグループ・グローバル・マーケッツは「転換社債償還のため資金は最低32億~35億元が必要で、融資額は少なくとも30億元以上なければ不足」と強く主張し、銀行団8行との間で綱引きが続いた。最終的に銀行団は、プロモスが差し押さえ順位2位の工場を新たに担保として提供する意向を表明したことを評価し、30億元の融資に同意した。また経済日報によると、銀行団は追加融資のほか、8行が保有するプロモスの転換社債4,000万米ドル分(約12億5,000万元)を償還せず引き続き保有することにも同意した。
このほか工商時報によると、台湾積体電路製造(TSMC)と聯華電子(UMC)もプロモス支援のため、プロモスの機器設備30億元分を半額の15億元で購入するとみられ、追加融資、償還延期、設備売却で約50億元が償還資金に充てられることになるという。
「第1関門突破に過ぎない」
協調融資の主幹事銀行、台湾銀行の張秀蓮董事長は協議終了後、「今回の追加融資への同意は第1関門突破に過ぎない」と語り、「20日までに債権行全8行の董事会で承認を得る必要があり、さらに23日の償還金入金日までに、シティは銀行団に対し償還資金に不足がないことを明確にしなければならない」と、依然プロモスの危機が去ったわけではないと強調した。
一方プロモスの曽邦助スポークスパーソンは同日夜、「銀行が追加融資に同意したという前提の下、当社は今後債権者と償還について協議を行う」と発言した。ただ観測によると、プロモス社債の償還を求める債権者は、銀行団が融資を決める前の段階で97%に達していたとされ、「30億元で足りるのか」との質問も出たが、曽スポークスパーソンはコメントを避けた。
なお、銀行団による融資の条件付き決定について邱正雄行政院副院長は17日午前、「銀行の専門家としての判断だ」と語った。「政府が銀行に圧力を掛けたのか」という質問に対しては「あり得ない」と一蹴した。