ファウンドリ―世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の張忠謀董事長は23日、「世界の半導体産業景気は既に谷底に達した。ただ、今後の回復は『V字』や『U字』ではなく、横ばいからゆっくりと上向きに向かう『L字回復』となる」との見方を示した。台湾経済の回復時期については、「欧米は今年末に景気の底を迎えると予想されるが、台湾はそれより若干早いかもしれない」と語り、第3四半期の可能性を示唆した。24日付経済日報などが報じた。
記者会見に答える張忠謀董事長。電子業界では、ファウンドリ―のTSMC、PCのエイサー、パネルのAUOが比較的楽観的な見通しを示しているのに対し、IC設計のメディアテック、EMSの鴻海が悲観的と見方が分かれている(23日=中央社)
張董事長は世界中の大手3C(コンピュータ、通信、家電)業者を顧客に持つ最大手ファウンドリーの経営トップで、2007年末に台湾の企業家としては最も早く低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題による世界経済への影響について警告を発するなど、その発言は電子産業の景気動向を占う上で重要な指標という定評がある。
昨年世界の半導体産業がマイナス成長となったことについて張董事長は、「一般的な景気循環とは関係なく、世界金融危機の影響を受けたもの」と分析し、「今回の不景気は数十年に一度の大災難と言える」と語った。 その上で、半導体産業が2008年の水準を回復するのは12年という予測を示した。金融危機で最も深刻なダメージを受けた米国のGDP(国内総生産)が08年の水準を回復するのは11年の予測で、半導体はその後追いとなるというのが見通しの根拠だ。
なお、今年の半導体産業全体の成長率は前年比マイナス30%まで落ち込み、その後は年4~5%の成長を続けるという見方だ。
「中国はIC設計、台湾はファウンドリー」
また、米国経済が深刻な打撃を受ける中、「今後世界経済は多極化に向かい、中国が強国の一つとなることは明らか」と指摘した上で、台湾と中国の関係について「巨大市場を抱える大陸(中国)はIC設計、台湾はファウンドリーと分業することが望ましい」との考えを示した。その理由として、「設計業は市場に密着する必要があり、ファウンドリーは末端市場に近い必要はない」ことを挙げた。
公共建設も景気振興に貢献
張董事長は政府の役割について「30年代の米国、90年代の日本での教訓は、政府が直接的な景気振興策を打ち出しても大きな効果はないということだった」と指摘し、政府に対し健全な金融システム、健康保険、失業給付など社会のセーフティーネット維持に加え、公共建設推進に努力するよう提言した。「既に道路建設が完成していた90年代の日本とは違い、台湾では公共建設が不十分なところも多く、景気振興に一役買うことができる」という見方だ。
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