台湾積体電路製造(TSMC)とインテルは米国時間の2日、インテルが小型・省電力のMPU(超小型演算処理装置)「Atom」の技術プラットフォームをTSMCに供与する戦略提携を発表した。両社は技術協力により、Atomをベースとしたシステム・オン・チップ(SOC)がスマートフォンやモバイル・インターネット・デバイス(MID)をはじめとした幅広い電子デバイスに採用されることを狙っていく。中央社などが3日報じた。
インテルのオッテリーニCEO。開発コスト削減のため生産の外部委託を拡大する可能性があり、TSMCはその試金石という見方もある(3日=中央社)
TSMCとインテルは覚書(MOU)に基づいて、AtomプロセッサのCPU(中央演算処理装置)コアを、TSMCのプロセス、IP、ライブラリ、デザインフローを含む技術プラットフォームへ移植する。TSMCはこれを自社のIPインフラと統合させて新たな半導体製品を製造する。なお、インテルはハイエンドの製造プロセスをTSMCに移転することはないと強調している。
インテルにとってTSMCとの提携は、独自に半導体開発を進めてきた従来方針の転換を意味する。これについてロイター通信は、「世界的な景気後退が深まる中で、両社で新市場を開拓する戦略」と分析した。インテルは変化の激しいコンシューマ向け電子デバイス市場向けの対応は不得手とされ、その点からも提携は正しい選択という指摘が出ている。
スケジュール・発注量は未定
両社の提携について、クレディ・スイス証券の半導体アナリスト、ランディー・アブラムス氏は、「今後の提携スケジュールやインテルによる発注量などすべて未定だ。TSMCにとって、チャンスは保障されたが増えるわけではない」と語り、短期的にはメリットは得られないという見方を示した。ただ、将来的にAtomがより多くのPCハード関連製品に浸透していけば、TSMCにとって億米ドル単位の商機になるとした。
両社の提携について台湾メディアからは、TSMCが「Atom」そのものをインテルから受注するという観測も出ていたが、実際は技術供与にとどまった。