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TMC発表は期待外れ、課題山積の批判相次ぐ


ニュース 電子 作成日:2009年3月6日_記事番号:T00013857

TMC発表は期待外れ、課題山積の批判相次ぐ

 
 経済部は5日、域内DRAM産業の再編・統合に向けた第一歩として、受け皿となる新会社、台湾記憶体公司(TMC)を6カ月以内に設立すると発表した。しかし、最も注目されていたエルピーダメモリか米マイクロンかの技術パートナーの選定は先送りとなり、TMCの運営資金の問題や、各社の債務を引き継ぐのかどうかなど、台湾各メディアからは「課題は山積」と報じられている。6日のDRAM各社の株価は大幅安となり、発表内容が期待外れに終わったことを裏付けた。
 
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宣明智召集人。TMCを軌道に乗せられるかどうか注目が集まる(6日=中央社)
  
 6日付工商時報は、TMCの召集人に就任が決まった宣明智・聯華電子(UMC)名誉副董事長の課題として、▽資金調達▽各社の債務の扱い▽特許技術▽利益衝突の回避──の4点を挙げている。
 
 TMCは政府が50%以下で出資を行う方針だが、長期・短期合わせて計2,000億台湾元(約5,600億円)以上の債務に苦しむ域内DRAM各社に資金余力はなく、行政院国家発展基金(国発基金)による出資以外に新たな運転資金を捻出できないのが現状だ。国発基金が運用可能な資金は現在1,000億台湾元(約2,800億円)で、これも不足する可能性がある。エルピーダやマイクロンも苦しい財務状況にあるのは同じで、債権銀行も新たな融資には二の足を踏むとみられるため、TMCにとっては運営資金が筆頭課題となる。

 また、経済部は持ち株会社方式による域内DRAMメーカーの統合・再編を計画しているとみられるが、域内各社の既存債務を引き受けるのかどうかも課題だ。6月17日には力晶半導体(PSC)の一定の転換社債の償還期限があり、対応が注目される。
  
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技術移転の成否が鍵
 
 台湾DRAMメーカーは核心技術を持っておらず、受託生産中心のため、景気変動の影響を受けやすい。このため、宣召集人が重要技術の移転に成功するかは、TMCの成否を占う最も重要な鍵と言ってよい。マイクロンが移転すると宣言している2,500~3,000件の特許の中に、台湾メーカーにとって本当に重要なものがあるのどうか。また、日立製作所とNEC、三菱電機の3社のDRAM部門が統合された形のエルピーダは、海外への特許移転に当たって制約があり、どの程度の技術が台湾にもたらされるかの見極めが必要となる。 
 
 このほか、宣召集人が属するUMCは茂徳科技(プロモス・テクノロジーズ)に6.47%の出資を行っており、宣召集人が中立的立場を徹底できるかどうかも問われる。
  
DRAM株、大幅下落
 
 TMC設立の発表では、最重要事項であるエルピーダかマイクロンか選定が「3カ月以内に決定する」と先送りされたことで、業界からは「切迫した問題が解決されず、具体的な結論はなかった」と不満の声が挙がっている。
 
 発表を受け、DRAM各社の6日の株価は、力晶と華邦電子(ウインボンド・エレクトロニクス)がストップ安に、南亜科技も5.3%値を下げ、陣営を問わず軒並み大きく売り込まれた。
  
南亜科・イノテラ、淘汰拒否を表明
 
 宣召集人はかつてUMCジャパンの董事長を務め、その間、エルピーダを含む日本の半導体業界と人脈を築いたため、現時点でエルピーダとマイクロンの選択では、エルピーダが有利という観測が出ている。
 
 マイクロンと提携関係にある台塑集団(台湾プラスチックグループ)傘下の南亜科技の呉嘉昭董事長と連日昌総経理、華亜科技(イノテラ・メモリーズ)の高啓全総経理らは5日共同で記者会見を開き、「台塑集団はDRAM事業が買収されることや、事業からの撤退は考えていない」と強調。半導体の特許数で世界2位を誇るマイクロンそして台プラは、DRAM統合のプラットフォームへの参加を希望するという考えを改めて訴えた。
 
 なお、半導体業界には、「台プラグループには十分な財力があり、マイクロンとの連携によって、台湾で2大陣営を形成することが望ましい(束崇万・創見董事長)」という意見もある。
 
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