DRAM産業統合の受け皿として設立されると目されていた台湾記憶体公司(TMC)は、宣明智招集人が10日、「既存企業の合併は行わない」と発言。この方針表明を受け、エルピーダメモリと力晶半導体(PSC)が、政府からの支援を見限り、株式交換による合併など「民間主導の統合」を進めることで意見を交わしていたことが明らかとなった。坂本幸雄エルピーダ社長は、宣氏の発言のあったその日に緊急来台しており、衝撃の大きさがうかがえる。12日付経済日報が報じた。
力晶の譚仲民副総経理は11日、坂本社長は宣招集人の発言後、直ちに来台して黄崇仁董事長と緊急協議を行い、エルピーダ、力晶、および両社合弁の瑞晶電子(レックスチップ・エレクトロニクス)を合併する計画を話し合ったと認めた。
レックスチップに資源集中か
力晶は「合併計画の詳細はまだ話せない」としているが、現在世界で最も技術と設備に優れたDRAM工場を持つレックス・チップを統合のプラットフォームとして、エルピーダ、力晶の親会社2社がリソースを同社に集め、その後状況に応じてさらに統合を進める構想を抱いているとされる。
また、観測によるときのう(11日)、エルピーダとの協議をさらに詰めるため今度は黄董事長が日本に飛んだとされ、来週18日にも合同記者会見を開き、合併を発表するとの見方も出ている。ただ、これについて譚副総経理は「黄董事長の出境は私的な旅行であり、合併とは無関係。共同会見を来週行うという話も聞いたことがない」と否定した。
南亜科、「政府あてにしない」
一方、台塑集団(台湾プラスチックグループ)傘下のDRAMメーカーである南亜科技も、「もう政府をあてにはしない」と失望感を表明しており、提携パートナーで、エルピーダとともにTMCへの技術供与元候補に挙がっている米マイクロンと善後策の協議に入ったとみられる。
経済部長、「TMCは工場を買うだけ」
宣招集人の発言に続き尹啓銘経済部長も11日、「TMCは既存企業の合併は行わず、負債を肩代わりする必要のない『きれいな』生産能力・設備を購入し、健全で競争力の高い企業にしたい」との考えを示した。さらに力晶の黄董事長から提示された「DRAM産業がこれほどの惨状にあるなか、新会社を作る意味があるのか」との疑問に対しては、「政府が目指すのはDRAM産業を再生して国際的な競争力をつけることであって、個別企業の救済ではない」と語った。
なお、尹経済部長は12日、マイクロンとエルピーダのうちの1社と、交渉が非常に順調に進展していると明らかにした。その企業は台湾への技術移転に意欲的で、さらに域内の既存6社のうち1社が、TMCに製造プロセスの研究開発(R&D)要員数百人の提供を申し出ているとも明かした。
プロモス、追加融資困難に
ところで、政府がDRAM企業の救済を否定したことで、財務危機のさなかにある茂徳科技(プロモス・テクノロジーズ)は、債権銀行団から30億元の追加融資を受けることが困難となる見通しだ。これは、彰化銀行が政府からの支援取り付けを融資実行の条件としているためだ。
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