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作成日:2009年3月13日_記事番号:T00014000
中国で繁体字復活論、賛否両論渦巻く
簡体字、それとも繁体字?中国の第11期全国人民代表大会第2回会議で、台湾籍代表の潘慶林全国政協委員が提案した「繁体字復活論」が議論を呼んでいる。
現在、中国では簡略化された漢字である簡体字を使用しているが、これを向こう10年間で段階的に廃止し、中華人民共和国成立以前に使用されていた繁体字の使用を再開するというのが提案の内容だ。
潘委員はその理由として、(1)50年代に作られた簡体字は粗雑で、漢字本来の芸術性や科学性を失い、例えば「愛」という字は簡略化で「心」が省かれ「心のない愛」になっている(2)パソコン使用人口が増加した現在、繁体字は複雑すぎて学びにくい、書きにくいという過去のデメリットはなくなった(3)繁体字復活は中台の統一に有利。台湾では繁体字を世界無形遺産に申請する動きがある──の3点を挙げている。
これに対し賛成派からは、「中国人がみな同じ文字を使用すれば、結束を固めるのに役立つ」、「中台の三通後は、教育での第四通を目指すべき」などの意見が出ている。
一方、反対派は「簡体字は中国文化の進歩、繁体字は歴史。繁体字は書道や芸術、中国古代史や古代文学など専門的な研究には必要だが、日常生活では簡体字のほうが便利で、引き続き普及させるべき」(紀宝成中国人民大学長)や、「簡体字のおかげで中国の識字率は急速に高まった。繁体字を使用する台湾では、南部農村での識字率は中国よりも低い」(朱崇実アモイ大学長)などと意見も。
ちなみに、国連の統計によると、07年における識字率は台湾が97.3%で、世界181カ国・地域で54位、中国は90.9%で86位だ。
なお、中国当局は12日、この論争にくぎを刺すように「簡体字は中国の合法的使用文字」という見解を発表。近い将来、中国での繁体字復活はなさそうだ。