自動車大手、裕隆集団の厳凱泰執行長(CEO)は16日、「自社開発の『低価格国民車』を2年以内に発売することを決めた」と表明した。価格帯は35万~40万台湾元(約103万~117万円)の予定だ。同社では2011年の自動車輸入自由化後に予想される中国・インド車流入を前に、自社ブランド車によって低価格市場での地位確立を目指す構えだ。17日付工商時報などが報じた。
厳執行長は「過去2、3年自動車業界は非常に厳しく、常に財源確保とコスト低減を図ってきた」とした上で、「低価格国民車への投資は財源確保に最適な手段」と期待を示した。今後低価格車の発売に向け、資本金約10億元の新会社を設立し、台湾の規定に沿って開発を行う考えだ。
最短期間で新会社設立を
台湾は現在輸入割当制度により自動車の輸入台数を制限しているが、世界貿易機関(WTO)加盟時に2011年からの撤廃を約束している。これについて裕隆汽車の陳国栄総経理は、「自由化後に中国大陸やインドの低価格車が台湾に流入することは避け難いが、当社は簡単に市場を明け渡すつもりはない」と話し、「最短期間で商標登録、会社設立を実現したい」と急いで対応に当たる姿勢を示した。
LUXGEN、勝算は8割
一方、裕隆集団が多額の資金を投入して立ち上げた高級車自社ブランド「LUXGEN」は、第3四半期に第1弾となる7人乗り高級MPV(多目的車)の発売を予定している。これについて厳執行長は、「台湾ハイテク業界との共同開発車で、装備、性能、アフターサービスどれをとっても数百万元の高級車に匹敵するが、販売価格は皆さんを驚かせることになる」と語った。
業界では規模の小さい台湾市場での「LUXGEN」ブランド立ち上げについて「大きな賭けだ」との指摘も出ているが、厳執行長は、「確かにその通りだが、8割の勝算がある」と自信を見せた。
なお、「LUXGEN」は現在中国杭州市蕭山で中誉集団と折半投資により工場を設立する計画だが、中国政府が自動車産業の再編を進める方針を打ち出したことから、工場建設に関する許可認定作業が遅々として進んでいないという。このため裕隆集団は、提携パートナーを東風集団に変更することを検討しているとの観測が出ている。
これについて厳執行長は、「新たな合弁パートナーを迎える可能性はある」と否定しなかった。さらに、裕隆集団の合弁事業である東南汽車についても「中国のある大手グループ傘下に編入する可能性がある」と語っており、中国メディアではこれが広州汽車集団か北京汽車集団の可能性が高いとの見方を伝えている。
「電動車は次の1兆元産業」
また厳執行長は電動自動車について、「台湾には、世界をリードするカーエレクトロニクスをはじめ開発のための技術がすべてそろっている」と語り、「世界的に省エネへの要求が高まる中、台湾の新たな1兆元産業に成長する可能性がある」との認識を示した。同グループでは既に電動車を試作しており、厳執行長は試乗した際の感想を、「加速性能はガソリン車よりはるかに優れている」と語った。
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