馬英九総統は5日、米アプライド・マテリアルズのマイケル・R・スプリンター社長兼CEO(最高経営責任者)と会見し、「政府は半導体12インチウエハー工場の中国投資を開放する可能性を排除しておらず、経済部は既に検討に入っている」と語った。経済部工業局は7月に製造業による中国投資規制の緩和について検討・報告を予定しており、半導体産業については、従来の総量規制、ウエハーサイズによる規制から、製造プロセスによる規制へと移行し、65ナノメートルまでを解禁する考えとみられる。6日付経済日報などが報じた。
プロジェクト単位の規制へ
現在半導体産業の中国投資は8インチウエハー工場、および0.13マイクロプロセスまでとなっているが、中台関係が大きく改善する中、工業局は大幅な規制緩和を行い、今後は総量規制からプロジェクトごとの審査に変更したい考えとされる。また審査の原則として、「最新技術の移転禁止および台湾への同等の投資」が求められる見込みだ。
工業局の杜紫軍局長は規制緩和の方針について、「ワッセナー協定(通常兵器および関連製品・技術の輸出に関する国際的な申し合わせ)に準拠して行う」と語っている。同協定では半導体産業について0.18マイクロプロセスまでの輸出を認め、これ以上の技術は個別審査とするとしている。経済日報によると、最新技術とは45ナノプロセス以上の技術を指し、ここまでは開放しない見通しだ。
現在半導体市場では0.13マイクロ、90および60ナノプロセスが主流で、その多くが12インチ工場で製造されており、米インテルは既に中国に90ナノプロセスの12インチ工場を設置している。
「開放は当然」
12インチ工場の投資が開放されれば、聯華電子(UMC)の曹興誠名誉董事長らが2001年に元社員による出資の形で設立した中国江蘇省蘇州市のファウンドリー、和艦科技の合併を支援する形になるという指摘も出ているが、同社の宣明智名誉副董事長はインテルの中国投資を挙げ、「中国市場では台湾の技術がなくとも、他の世界大手より技術が得られる」と述べ、開放は当然と指摘した。
政治問題化に批判
12インチ工場の中国投資開放を示唆した馬総統に対し、民進党の蔡英文主席は「ファウンドリーは台湾の重要産業であり12インチ工場の開放は慎重に対応する必要がある」と疑問を呈した。また、8日付自由時報は、「台湾IC産業の核心技術と人材が流出する恐れがあり、関連産業で深刻な失業問題が起きる」という専門家の意見を伝えた。
しかし半導体業界からは「市場のコントロールに任せるべきであり、政治の道具にして商機を逃すようなことはやめてほしい」と、蔡主席の発言に批判の声が上がっている。
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