ノートパソコン受託生産で世界1位、2位の仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)、広達電脳(クアンタ・コンピュータ)は今年、2社で1億台前後の大幅な出荷成長が予想される。両社とも世界最大手ブランドであるヒューレット・パッカード(HP)の出荷台数を上回る見通しだ。受託メーカーは出荷量の拡大に伴って部品調達でブランドメーカーよりも強い価格交渉力を備えるようになり、今後サプライチェーンの主導権を握る可能性も指摘されている。12日付電子時報が報じた。
2009年通年の出荷台数でクアンタを抜いて世界トップに立ったコンパル今年、宏碁(エイサー)やデルからの受注増により4,600万~4,800万台の出荷を目標としているが、業界では5,000万台を超えるとの見方も出ている。また昨年約3,600万台で2位に転落したクアンタも、今年は約40%の大幅成長となる5,000万台突破を目標としてトップ返り咲きを狙う。
一方、ノートPC世界最大手ブランド、HPの今年の出荷台数は、業界予測によると昨年の3,700万台から4,500万台に成長する見通しで、2位ブランドのエイサーは、昨年の3,100万台から30%以上の成長となる4,000万台以上を目指している。 今年、コンパルとクアンタが目標を達成した場合、受託メーカー上位2位の出荷台数がともに、ブランドメーカー上位2位を上回るという状況が初めて出現することになる。
受託メーカーが調達権掌握も
業界関係者によると、これまで液晶パネルなど部品調達に関する決定権は主にブランドメーカーが握っており、使用する部品を指定するか、ブランドメーカーが購入して受託メーカーに売却してきた。しかし、受託メーカーの出荷量がブランドメーカーを上回る規模に増大すれば、部品調達量も拡大し、調達先との価格交渉力もブランドメーカーが単独で行うより強力なものとなる。このため、今後は受託メーカーがノートPCの重要部品に関する調達決定権を掌握するようになる可能性もあり、これが現実となれば受託メーカーは利益拡大が見込める。
しかし、液晶パネルのような重要部品は、汎用型製品とは違って単一メーカーから調達することはないため、短期内にブランドメーカーが決定権を手放すことはないとの見方も一部にある。ただ、長期的な製品価格の動向や市場競争の流れから見て、受託メーカーの経営・出荷規模がブランドメーカーを上回るようになれば、従来の産業形態が変化を迫られることは必然とみられる。
単純な出荷競争時代は終わり
また最近、コンパルが中華映管(CPT)に出資し、クアンタが友達光電(AUO)との関係を深め、さらにAUOがバックライトモジュール、発光ダイオード(LED)など傘下の川上部品メーカーの統合を進めるなど、ノートPC受託メーカーと重要部品メーカーの結び付きが強まっている。
こうした動きについてある業界関係者は、「今後受託メーカー間の競争は、単純な出荷台数争いではなく、製品の設計能力、サプライヤーとの協力関係の強さ、サプライチェーン全体の統合能力が勝敗の鍵を握る」と指摘した。
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