呉敦義行政院長は2日、台北市の一等地にある国有地の売却入札を、公共利用目的の場合を除いて当面見合わせると発言した。高騰する一方の地価対策として、投機目的の取引抑制を狙う。最近の国有地入札では、豊富な資金を抱える大手金融グループによる1坪数百万台湾元(1元=約2.77円)に上る高値落札が相次いでおり、同じ金融業界内からすら「異常なまでの高騰」という批判が出ていた。3日付経済日報などが報じた。
財政部国有財産局(国産局)は、呉行政院長の発言を受け、今月11日に予定していた台北県市の国有地13件の入札をすべて取り止めると表明した。うち10件は台北市内、3件は台北県八里郷、泰山郷、新店市で、最低入札価格は台北市大安区の坪3億5,700万元(222坪)を筆頭に、13件合計で6億4,300万元に上る。
張佩智国産局長は、今後国有地の売却は公共利用の場合を原則とし、公共インフラに対して優先的に提供すると語った。国産局は3日に売却見合わせの対象物件について検討し、一両日中にも発表するもようだ。
効果は一時的、総合的対策を=経済日報
国有地の売却入札見合わせに対し、業界からは評価と批判の意見が交錯している。不動産仲介大手、信義房屋の薛健平総経理は、国有地が高値で落札されるため、所有地を売却したい地主が地価を過度に高く評価して取引が成立しないケースが往々にあると指摘。このため、「政府の措置は不動産業界にとって悪い話ではない」との見方を示した。
一方、不動産業の同業者団体、中華民国建築開発商業同業公会全国聯合会(建商公会)の王光祥理事長は、地価高騰の抑制に逆効果となると批判的だ。国有地売却がなくなれば、建設会社は業績目標の達成のために都市再開発にその分の資金をつぎ込むことになり、さらなる地価高騰を招くとの予測を示した。
経済日報は、政府の措置を受けて不動産市場は一時的に落ち着く可能性もあるが、地価高騰の根本的な解決にはならないとして、金融政策や交通インフラの整備など総合的な対策を採る必要があると指摘した。
忠孝東路の一等地、坪91万元で落札
台北地方法院(地裁)民事執行処が2日実施した競売で、太平洋崇光百貨(太平洋そごう)忠孝店などが徒歩圏内にある住宅物件(台北市大安区)が坪91万5,000元で落札された。築25年のマンションであるにもかかわらず、同エリアでの不動産競売の住宅物件としては過去最高の坪単価となり、地価高騰の深刻さを改めて見せつけた。
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