液晶パネル最大手、友達光電(AUO)は3日の董事会で、業界の先陣を切って中国に第7.5世代のパネル前工程工場を設置することを正式に決定した。同社は投資額12億米ドルを上限に新会社を設立する計画で、できるだけ早く経済部に審査を申請する考えだ。新工場の設置地点は「華東地区」としているが、江蘇省昆山市の可能性が高いとみられる。同工場は台湾パネルメーカー初の中国前工程工場となる見通しで、今後急速な成長が予測される同国液晶テレビ向け市場での日台韓メーカーの競争において指標的な意義を持つ。4日付経済日報などが報じた。
AUOは現在、後工程モジュール(LCM)工場を抱える江蘇省蘇州市を華東地区の中心拠点としている。しかし業界関係者は、AUOは既に昆山経済技術開発区での工場設置に中国政府の認可を受けていることから、7.5世代工場は同地での設置が最有力と指摘している。
現地メーカーと合弁で迅速に推進
AUOが予定する投資額12億米ドルは、台湾元換算で約386億元(約1,070億円)となるが、業界関係者によると7.5世代工場1基の設置費用は、一般に約800億元が必要だ。このためAUOの中国新工場は現地企業との合弁事業となる可能性が高く、同日付工商時報は、提携相手として昆山市政府が出資するパネルメーカー、龍飛光電を挙げている。
龍飛光電は、中国政府から次世代工場の設置許可を正式に受けた数少ないメーカーの1社であるため、AUOの投資計画に対する台湾政府の認可が遅れた場合でも、提携関係を維持する限り迅速な推進が可能となる。
なお同日付電子時報は、AUOの中国投資決定について、「AUOは奇美電子(CMO)、群創光電(イノルックス・ディスプレイ)などの合併により間もなく設立を迎える新・奇美電子(チーメイ・イノルックス)に生産能力台湾首位の座を奪われることになるが、大陸(中国)に台湾メーカー初の前行程工場を設置すれば再び奪還できる」と指摘した。ただ、奇美電も早くから中国に前工程投資への意欲を示しており、同社の今後の展開に注目が集まる。
末端市場への影響力が鍵
工商時報は、「急速な需要成長を遂げる中国市場が日台韓パネルメーカーの決戦の地となる」とした上で、「パネル業界の競争は今後、生産能力の多寡やサプライチェーンの充実ではなく、液晶テレビなど末端ディスプレイ機器市場に対する影響力に大きく左右される」と指摘している。
AUOは、傘下の景智科技が中国大手テレビメーカー、四川長虹電器と合弁で液晶テレビ組み立ての長智光電(四川省綿陽市)を設立しており、同じくAUO傘下のバックライトモジュールメーカー、達運精密工業も今後、中国家電最大手、海爾集団(ハイアール)との提携が見込まれるなど、現地大手ブランドとの関係を強めている。達運精密工業はハイアールとの提携で、120万6,000米ドルを投じて青島に生産拠点を設置すると観測されている。
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