ノートパソコン業界は今年、市場の大幅成長が予測される一方、ブランドメーカーが生産委託費用を削減していることなどから、仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)など受託生産メーカーの利益に圧迫感が強まっている。同社は今年通年の粗利益4%の確保に向けて、自社グループ企業からの部品調達率の引き上げなど対策に取り組む。8日付電子時報などが報じた。
コンパルの2009年第4四半期の粗利益率は前年同期の5.1%から4.3%に、昨年通年でも08年の5.04%から4.6%に低下した。陳瑞聡同社総経理は、ブランドメーカーからの値下げ圧力により同業他社との価格競争が激しくなっていることを利益率低下の根本要因として挙げ、「今年は4%台確保の防衛戦になる」との見通しを語った。また、中国の生産拠点での労働力不足による人件費上昇も要因の一つと指摘した。
陳総経理は粗利益率の維持に向けて、今年は組織の見直しによって設計段階からのコスト改善を図るとともに、自社グループ企業からの部品調達率向上に取り組む方針だ。筐体(きょうたい)では、傘下の巨宝精密加工からの供給率が、今年第2四半期~第3四半期に40~50%に達する見通しだ。
原材料価格の上昇に懸念
ただ、懸念材料として原材料価格の上昇がある。陳総経理は「チリ地震で銅採掘に影響が出て、銅価格が上昇の兆しを見せており、銅箔(どうはく)基板、線材などがあおりを受ける」と発言。コンデンサーなど受動部品についても、「特に積層セラミックコンデンサー(MLCC)は第2四半期に需給がひっ迫する。第3四半期に改善を期待している」と話した。
華東の労働力不足、今月中に解決
一方、中国・華東地区で深刻化していた労働力不足については、「今月末までに解決する」との見通しを語った。華東地区では、低賃金を不満とする労働者が春節(旧正月)連休後に職場復帰しないなど、労働力不足が深刻化していたが、各社が賃上げに応じたことなどから、労働力不足は解消に向かっている。
クアンタも利益率低下か
従来6%以上の粗利益率を維持してきた広達電脳(クアンタ・コンピューター)も、第2四半期から始まるHPのコンシューマ向け製品で低利益率製品の比重が高まる見通しのため、全体の利益構造に一定の影響が出るとみられている。
なお、今年の業界の激しい値下げ競争は、ヒューレット・パッカード(HP)が利益率の比較的低いコンシューマ向けノートの発注をクアンタに集中させたことが発端のようだ。この結果、クアンタ以外の受託メーカーは残りの受注獲得を目指す際に、従来よりさらに低い価格の提示を余儀なくされているという。
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