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石油・化学
作成日:2010年3月22日_記事番号:T00021629
台プラ仁武工場、地下水と土壌に高濃度汚染
行政院環境保護署が昨年、台塑集団(台湾プラスチックグループ)系列の台湾塑膠工業(フォルモサ・プラスチックス)仁武工場(高雄県仁武郷)で実施した環境汚染サンプル調査で、地下水と土壌に高濃度の汚染が確認されたことが20日までに分かった。21日付自由時報などが伝えた。
それによると、発がん性物質の1,2-ジクロロエタンの濃度が環境基準値の30万倍に達したのをはじめ、クロロエチレンが同975倍、ベンゼンが同70倍の高濃度で検出された。
仁武工場は、周辺の大社郷を含む石化コンビナート地帯、仁大工業区内にあり、1973年から工業用塩、エチレン、プロピレンなどを原料に液体化学物質、塩酸、クロロエチレン、PVC樹脂などを生産している。
高雄県政府は先ごろ、土壌と地下水の汚染を理由に仁武工場を「控制場址(管理工場)」に指定していた。同県環境保護局は、工場周辺に地下水くみ上げ設備を設置し、汚染範囲の拡大を防止する措置を取ったほか、地下水の飲用、使用を禁止する措置を講じ、工場側に改善計画の提出を求めた。また、行政院環境保護署も工場廃水の外部流出を禁じるとともに、改善が見られなければ、操業中止を命じる方針を示していた。
関連規定によると、単一汚染物質の検出量が基準値の20倍以上に達した場合、「控制場址」より一段階厳しい「整治場址(整理改善工場)」に指定され、環境保護署による改善指導を直接受けることになる。
台プラ側は「地震でセメントが割れ、汚水が漏れ出すようになったのではないか」とし、石化原料の液体が漏れ出し、高濃度の汚染につながった可能性を示唆した。
周辺で環境問題に取り組む地球公民協会の李根政執行長は「実際の汚染範囲はさらに広いとみられ、仁武工場は直ちに操業を停止すべきだ。今回明らかになった汚染は一部にすぎず、雨季に地下水の水位が上昇すれば、工場周辺全体が汚染の危機にさらされる」と警告した。
水稲が変色
周辺の高雄県橋頭郷では、水田2ヘクタールで水稲が黄色く変色して枯れているのが見つかり、関連性が指摘されている。
一方、成功大環境微量毒物研究中心の李俊璋主任は、今回特に高濃度の汚染が明らかになった化学物質について、「1,2-ジクロロエタンは発がん製物質であることが確認されており、肝臓や神経を侵す可能性がある。クロロエチレンは血管肉瘤(りゅう)を起こすほか、脳、肺のがん、白血病、リンパがんを起こすことが知られている。ベンゼンは白血病と肺がんに関係している」と指摘した。
高濃度の汚染発覚で、周辺住民の不安は高まる一方で、仁武工場の操業中止を求める声が強まるのは必至だ。また、石油化学プラント周辺の環境問題が改めてクローズアップされた形で、台プラを含む石化業界が計画している新プラントの環境影響評価にも微妙な影響が予想される。