21日から台湾全土を襲っている中国大陸からの「黄砂」による深刻な大気汚染で、とうとう初の死者が出てしまった。台北在住の林東華さん(59)は、来月5日の「清明節」を前に、先祖の墓参りを済ませようと21日に家族と共に南部の嘉義へ。ところが突然胸が苦しくなり、病院に運ばれたものの帰らぬ人となってしまった。実は林さんは8年前からぜんそくを患っていた上、ちょうど黄砂濃度が最も高くなった時間帯に出かけたことで発作を起こしたもようだ。
林さんのほかにも、ぜんそくの発作を起こし入院する児童が急増するなど各地で黄砂による健康被害が報告されている。耳鼻咽喉科や眼科の受診者が増加し、省立台中医院では23日から26日まで「黄砂特別診療部門」を設置して対応に当たっているほどだ。
行政院環境保護署は当初、今回の黄砂濃度を1立方メートル当たり300マイクログラムと予測していた。ところが実際にはこれをはるかに上回り、全土39カ所の観測地点で1,000マイクログラムを超える観測史上最悪の濃度となった。高濃度の黄砂が台湾を襲った原因は、大陸から台湾に流れる上下層の気流が従来のように分散せず、一挙に南下したためらしい。
教育部は22日、黄砂が緊急レベルにまで深刻化した場合、各地方政府は、台風休みならぬ「黄砂休み」の実施を決定できると発表した。しかし、保護者からは「マスクをすればよいことで、大袈裟だ」との反対意見も多いようだ。
黄砂はこの2日間は濃度がやや薄まったものの、24日は新たな前線の到来とともに再び濃度が増すと予測されており、気が休まらない。経済効果をもたらす中国からの観光客は「熱烈歓迎」だが、黄砂のような招かざる客は極力ご遠慮願いたいものだ。
売り物の車も砂まみれに。営業を急きょ中止した中古車ディーラーも(中央社)