自動車大手、裕隆汽車の陳国栄総経理は24日、グループを挙げて進めている電気自動車(EV)発展計画について、「政府の補助政策実施に遅れが生じているため、量産スケジュールを延期せざるを得ず、現在行っている試験生産も一時停止する」と発言した。行政院は春節(旧正月)明けにもEV産業推進プランを発表するとみられていたが、充電スタンドの設置、補助金規模、免税期間などで調整がつかず、関係業者の間で「台湾はEV産業での競争に後れをとる」といらだちが募っているようだ。25日付工商時報が報じた。
世界的に環境保護意識が高まる中、EV産業は、台湾にとって半導体、光電に次ぐ「1兆元産業」となると期待されており、裕隆グループも4年前、「中台市場をリードするEVブランド」を目標に研究開発(R&D)に着手、既に100億台湾元(約290億円)余りの資金を投じている。
さらに、経済部が3年以内に台湾10都市のモデル地区で計3,000台のEV普及を目指し計画する「智慧電動車発展策略行動方案」(スマート電動車発展戦略アクションプラン)に合わせ、裕隆は昨年下半期から三義工場(苗栗県)で「LUXGEN」「tobe」両自社ブランドのEVを毎月10~20台試験生産している。
しかし陳総経理は、EV1台の生産コストは200万~300万元と高く、政府の関連政策が依然不透明な現在、資金的な負担が大き過ぎるため計画の一時中止を決めたと説明した。
免税3年では「産業支援できない」
業界の不満を受けて、朱立倫行政院副院長は24日、「(「発展プラン」の調整役を務める)尹啓銘政務委員に対し、速やかに支援政策をまとめるよう指示した」と話した。
ただ、行政院は26日に発展プランに関する会議を開くが、業界からの要望が特に強いEV購入に対する貨物税(物品税)免税措置については、経済部の計画による実施期間5年間が、財政難を理由とする財政部の要求によって3年へ短縮される公算が高く、陳総経理は「それでは『モデルプランの推進策』であって、産業発展を支援する政策ではない」と批判している。
業界関係者は政府に対し、日米などに倣い、少なくとも5~10年のモデル期間を設定し、前半の5年間を免税、後半の5年間は普及状況やガソリン車と比較したコストの低下状況をみて免税措置の終了時期を決めるよう提言している。
中国での生産計画は継続
裕隆は一方で、中国での電動車生産計画は積極的に進める方針だ。観測によると、裕隆と中国・東風汽車集団の合弁会社「東風裕隆汽車」は、中国国務院の工場設置認可を待って「LUXGEN」ブランドの電気スポーツ多目的車(SUV)生産を開始するほか、電動バスの開発にも着手しており、中国での量産を目指しているとされる。
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