営利事業所得税(法人税)の一律17%への引き下げを盛り込んだ産業創新条例案(産創条例)が早ければ16日にも立法院で可決される見通しとなった。成立した場合、同条例は今年1月1日にさかのぼって適用され、今年25%から20%への引き下げが行われたばかりの法人税がさらに低下するため、産業界はこぞって歓迎している。13日付工商時報などが報じた。
国民党立法院党団は12日、産創条例についての討論する党団大会を開催。法人税率を17%とする同党版条例案を正式決定し、行政院と総統府もこれに同意した。行政院原案では、法人税率を20%とした上で、研究開発(R&D)、人材研修、運営本部、物流センターの4項目に対する選別的税制優遇策の導入を検討していたが、国民党案では法人税17%への引き下げにより十分な運営コスト低減が図れるとして、研究開発以外の3項目が対象から外された。また、馬英九総統の指示を反映した形で、中小企業の新規雇用に対し「期間6カ月、毎月1万台湾元」の補助金支給策が盛り込まれた。
同日付経済日報によると、法人税の25%から17%への引き下げ、および税制優遇導入による税収減は年間1,488億元(約3,810億円)となり、行政院原案の1,105億元、野党民進党案(法人税17.5%への引き下げのみ実施)の1,208億元を上回る。
国民党立法委員によると、従来財政への打撃が大きいとして民進党案に反対してきた李述徳財政部長は今回、「長期的には企業の台湾投資を呼び込み、税収は増える」と語り国民党案に賛成したという。
従来型産業に恩恵
証券会社による2006年~08年の上場企業の平均法人税率に関する資料によると、上位30社のほとんどを従来型産業が占めており、引き下げが実現すればこうした企業が最大の恩恵を受けるとみられる。与党の決定を受けて台塑集団(台湾プラスチックグループ)は、「企業にとっていかなる形であれ減税は良いことで、内外から台湾投資を促進する効果がある」と歓迎の意を表明した。
政治的駆け引き優先
ただ、国民党の17%案は、同党の多くの財政・経済担当の立法委員が「税率の下げ幅で民進党には負けられない」と主張したことから決まった経緯があり、工商時報は「行政部門での議論が不足しており、重大な政策で専門的見地よりも政治的な駆け引きが優先された」と批判した。
なお中華財政学会の陳聴安理事長は、国内企業と外国企業に対する税率を統一している国家では法人税と個人総合所得税の税率が接近しており、台湾の法人税を17%とした場合、個人総合所得税40%との差は23ポイントまで拡大するため、企業が内部留保をため込み利益を株主に分配しなくなると指摘した。
また陳理事長は、法人税率の議論では香港(16.5%)やシンガポール(17%)の事例がよく引き合いに出されるが、香港はサービス業、シンガポールは金融業が主体の産業構造で比較すべき対象としては不適切と指摘した。そして、製造業を主とし、輸出依存度の高い台湾は、韓国(22%)を比較対象にすべきで、韓国に比べ脆弱(ぜいじゃく)な台湾の財政がさらに悪化することが競争力の低下につながるとの懸念を示した。
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