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欧州航空網まひ、長期化に懸念


ニュース その他分野 作成日:2010年4月20日_記事番号:T00022227

欧州航空網まひ、長期化に懸念

 
 英航空管制機関NATSによると、現地時間の19日夜、アイスランドの火山で再び4,500メートル規模の噴煙の吹き上げが観測され、火山灰が英国方面に向けて拡散している。欧州連合(EU)の緊急運輸相理事会で20日からの飛行制限緩和が決まった直後で、航空各社の運航再開が順調に進むかは予断を許さない状況だ。電子を含む台湾製造業界は、欧州の空の混乱が長引けば影響を免れない見通しだ。20日付電子時報などが報じた。
 
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中華航空は20日、台北~ローマ便の運航を再開し、大勢の旅行客が空港カウンターの前に列を作った。帰路で欧州に足止めされていた旅行者らを運び、21日夜に台湾に戻る(20日=中央社)

 英航空当局は、20日午後からロンドンなど南部を含む一部の地域で飛行制限を解除できる見通しとしつつも、状況は随時変化するため、政府や空港、航空会社と密接に対応を協議するとしている。

 なお、ニュージーランドの国有テレビ局、テレビジョン・ニュージーランドは20日の電子版で、新たな火山灰の到来を受けて、英航空当局が同日予定していたロンドンからの旅客機数機の運航再開を改めて検討し直していると報じた。同テレビ局は20日の再開には悲観的だ。

 EUは19日、欧州の各空域を火山灰の密度によって、「アイスランド周辺の危険空域」「注意空域」「正常運航できる安全空域」の3段階に分け、注意空域では安全管理を強化した上で飛行を認める方針を決めていた。

太陽電池、在庫が発生
 
 台湾製造業界では、太陽電池メーカーの欧州出荷に既に影響が出ている。世界最大の太陽電池市場である欧州では、モジュールメーカーの7割以上が海外から太陽電池を調達しているが、航空網のまひによって供給がストップしている。

 台湾業界では、茂迪科技(モーテック・インダストリーズ)、昱晶能源(ジンテック・エナジー)、新日光能源(ネオソーラーパワー)、昇陽光電科技(ソーラーテック・エナジー)、益通光能(イートン・ソーラー)など主要メーカーがいずれも欧州に製品を供給しているが、今回は出荷の滞りによって珍しく在庫が発生している。ただ、ある業者は、欧州への出荷は当面は困難だが、日本や米国への出荷に振り替えるため、販売面で問題は生じないとしている。

HTCに影響?
 
 電子大手では、スマートフォン最大手、宏達国際電子(HTC)が最も大きな影響を受けるという指摘が出ている。売上高の3割を欧州市場が占める同社は、製品の大部分を航空便で輸出しており、ちょうど多くの新製品を市場に投入する時期に当たっているためだ。

 同社は現段階では大きな影響は出ていないと強調する一方、各地の在庫および出荷状況の把握に努め、対応策を講じるべきか検討すると説明している。

 このほか、メモリモジュール各社も、売上高の約10%を占める欧州市場に航空便による輸出を行っているが、現段階では末端販売ルートに一定の在庫があるため影響は出ていないという。

 液晶パネル大手、友達光電(AUO)は、チェコのモジュール工場までのパネル出荷は海運で、チェコ工場からの出荷は陸運で行っているため、影響はないと話した。 

 経済部国際貿易局は、台湾企業の欧州向け輸出の影響額は試算不能としつつ、「状況が改善しない限り、欧州のバイヤーが訪台できなくなったり、台湾企業による欧州での展示会出展が取り消されるなどの影響が出る」と指摘した。

 現段階で、製造業界に大きな影響は出ていないもようだが、航空網まひが長期した場合、さまざまな悪影響が顕在化する恐れが強い。

欧州向け貨物便、3割値上げ
 
 なお、現段階で台湾と欧州を結ぶ貨物機は依然運航を停止しているが、中華航空(チャイナエアライン)と長栄航空(エバー航空)は先週、それぞれ今週23日と24日から欧州貨物便の運賃を30~35%値上げすると発表している。

 両社とも貨物便再開後、利用が殺到するとみていると観測されるが、欧州に出荷を行うメーカーには大きなコスト圧力となる。