鴻海精密工業がノートパソコン受託生産分野で急速に存在感を高めている。同業世界最大手、仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)の陳瑞聡総経理は28日、「既に脅威になっている」と指摘し、鴻海が業界で影響力を持つには一定の時間がかかるとしていた従来の見方を改めた。鴻海のノートPC出荷台数について証券会社は、今年500万台以上、来年は2,000万台前後まで急成長すると予測、シェアも8~10%に伸ばして世界4位の英業達(インベンテック)に並ぶとみている。29日付電子時報などが報じた。
コンパル総経理が懸念
鴻海の参入により、業界では受託価格の引き下げ競争が激化し、利益率の低下が懸念されている。コンパルの今年第1四半期の粗利益率は4.2%、2位の広達電脳(クアンタ・コンピュータ)は4.1%と、約1年前の5~6%から大きく低下している。
業界の現状について陳総経理は、「今年は群雄割拠の年だ。あらゆるメーカーが価格競争への参入を余儀なくされる中、鴻海が徐々に強みを発揮する」との分析を示した。ただ値下げ合戦は永久には続かず、ブランドメーカーによる生産委託先の振り分けは来年までにある程度固まり、受注価格の下落傾向は緩和するとの見方も示した。その上で、特定メーカー1社のみのシェアが伸び続けることはあり得ないとして、鴻海の勢力拡大には限界があると指摘した。
陳総経理は競争が激化する中でのシェア目標について、「現在の25%を死守する」との決意を表明。また、他社がノートPC以外に受注分野の多角化を推進していることに対しては、「彼らに競争力が足りないためだ」と笑って答えた。コンパルは依然ノートPCの売上比率が90%以上を維持している。
「今年も出荷世界一」
コンパルが28日発表した第1四半期のノートPC出荷台数は1,250万台で、クアンタの1,100万台を上回り首位を維持した。第2四半期は横ばい、第3四半期は5~10%増、下半期はPC買い替えブームが到来するとの判断から、陳総経理は通年予測を従来の「4,600万~4,800万台」から「4,800万台」に上方修正した。6月にさらなる上方修正を行う可能性もあるとしている。
証券会社は、コンパルの今年通年の出荷台数は5,500万台に修正され、昨年に続いて今年も同社が出荷台数トップを維持すると予測している。
なお陳総経理は28日、中国・四川省での工場設置を検討していることを初めて明らかにした。現在工場設置準備を進めているベトナムで最近、ストライキが再び増えていること、および顧客の中国市場での積極姿勢が理由だ。
Q1利益が3倍に
コンパルの第1四半期売上高は前期比3%減の2,166億5,400万台湾元(約6,500億円)、純利益は85億1,500万元で前期比6.4%増、前年同期比では約3倍となる204.11%の増加となった。大幅な利益増加には、3社合併で成立した新・奇美電子(チーメイ・イノルックス)に加わった傘下の統宝光電(トポリー・オプトエレクトロニクス)の売却益が貢献した。
また粗利益率は、前期の4.3%から0.1ポイント低下したが、陳総経理は「通年での4%以上を約束する」と強調した。
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