米誌タイムが29日に発表した「世界で最も影響力のある100人」のランキングで、台湾から「リーダー部門」第2位に王振堂氏(55)が、「ヒーロー部門」第8位に陳樹菊さん(60)が選出されたことが分かった。
王振堂氏は、世界第2位のパソコンメーカー、宏碁電脳(エイサー)の董事長で言わずと知れた有名人。では、陳樹菊さんとは一体いかなる人物なのか?
実はこの陳さん、台東市中央市場で野菜を売るごく「普通のおばさん」。しかし、彼女が「普通」でないのは、節約し苦労してコツコツ貯めたお金で長年善行を積んできたところだ。
陳さんは12歳の時、貧乏で医療費が出せなかったせいで母親を亡くした。以来、進学をあきらめて父親の野菜売りの商売を手伝うように。その後も貧しい生活は続き、今度は弟が肝臓を患い治療費が必要となった。そんな時、小学校の先生が何度も家を訪れ、お金も支援してくれたという。弟はついに帰らぬ人となったが、陳さんは「いつか恩返ししなくちゃ」と誓ったという。
1993年に父親が亡くなった後、「今度は自分の番」とばかりに遺産100万台湾元を仏教系の学校に寄付し、これを皮切りに以後20年間で孤児院や児童基金会、母校の図書館建設などに彼女が寄付した金額は何と1,000万元以上に。今年3月には、米経済誌フォーブスの「2010年アジア慈善ヒーロー」に選ばれたが、本人は「大したことじゃないよ」といたって謙虚。
今回の入選に「タイムって何?」「またどこかの雑誌が何かやらかしたの?」と、かえって迷惑そうな陳さん(30日=中央社)
タイム誌に掲載された陳さんの紹介文は、有名な映画監督、李安氏の執筆によるもの。李監督は文中、「お金は必要な人にあげてこそ役に立つ」という陳さんの言葉を引用し、称賛している。
なお、タイム誌の「影響力のある100人」には、これまでに陳水扁前総統(05年)や李安監督(06年)、王建民投手(07年)、馬英九総統(08年)が選ばれている。今年は「リーダー」「ヒーロー」「アーティスト」「思想家」の4部門に分けて各25人が選出されており、5月4日にニューヨークで授賞式が行われる予定だ。