鴻海科技集団(フォックスコン)傘下で香港上場の携帯電話受託生産メーカー、富士康国際(FIH)の深圳工場で働く24歳の女性従業員が11日投身自殺した。同社では今年8人が投身自殺を図り、6人が死亡、2人は未遂だった。富士康は故人のプライバシーを理由に原因についてコメントしていないが、一企業の生産拠点でこれだけ多くの自殺が相次ぐのは異例のことで、衝撃が広がっている。13日付聯合報などが報じた。
目撃者によると、11日午後7時ごろ、深圳市宝安区龍華に住む富士康の女性従業員が、突然8階の屋上まで駆け上り飛び降り死亡した。女性は河南省出身で、昨年8月の入社後、生産ラインで作業に従事していたが、最近は仕事を休み自宅に引きこもっていたという。警察で自殺の動機を調べている。
富士康深圳工場で今年自殺を図った従業員は、▽1月、1人▽3月、2人▽4月、3人▽5月、2人──、いずれも18~24歳の若者で男女に偏りはない。
郭台銘董事長は今月、6人目の自殺者が出たことを受け、山西省五台山の寺院の高僧に依頼して法要を営んだ。
「従業員の扱いは機械のよう」
今回の自殺当日、中国中央電視台(CCTV)が富士康の連続飛び降り自殺をリポートしていた。それによると、中国衛生部の統計では中国の自殺者は10万人に16人の割合で、大学生の場合は10万人に2~3人程度のため、深圳工場の従業員42万人から見ると富士康の自殺率は低い方だという。
リポートは一方で、1月に従業員だった弟が自殺し、自らも同社を離職した女性が、「幹部は従業員の自尊心を大切にしない。従業員を機械のように扱い、仕事は相当きつい」と訴える声も紹介した。富士康は管理の在り方と企業文化に欠けている点はないか、検討すべきという声も現地の評論家から出ている。
富士康は昨年7月に25歳の男性従業員が自殺した際、アップルのiPhone第4世代機のサンプル紛失をめぐって会社側から殴打を含む厳しい取り調べを受けたことが原因と報じられ、大きな注目を浴びていた。
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