パソコン世界2位ブランド、宏碁(エイサー)は27日、中国3位PCブランドを抱える方正集団(ファウンダー)と戦略提携の覚書を交わした。苦戦が続いている中国市場で、方正の充実した販路を通じてシェアを拡大し、PC世界最大手への足掛かりとしたい考えだ。双方は否定しているが、「提携はエイサーによる方正ブランド買収の第一歩」との市場観測も出ている。28日付工商時報が報じた。
方正集団は北京大学を最大株主とする政府系色合いが濃い企業グループで、中国市場では、中小規模都市および農村部の消費者、企業顧客、政府調達に強みを持つ。中国全土に1,500の販売経路を抱え、店舗約1万店を構える。
今後は、方正が販路網をエイサーに提供し、エイサーは方正の製品企画、研究開発(R&D)に参画することで協力を行う。なお提携分野はPC、プリント基板(PCB)、電子ブックに及ぶ。
2ブランド合計でシェア3位に
市場調査機関ガートナーの統計によると、中国PC市場において、エイサーの2009年度シェアは3.1%で6位、方正は6.3%で4位だった。覚書調印式に出席したエイサーのジャンフランコ・ランチ総経理は、「当社と方正を合わせればシェアは9.4%で3位となり、2位ヒューレット・パッカード(HP)にわずか1ポイント差に迫る」と強調した。
また王振堂エイサー董事長は、「中国は1~2年後には世界最大のPC市場となると予想され、エイサーが世界で戦うには同市場で業績を上げることが必須」と語った。その上で、今年の目標として中国市場での売上高を前年比倍増となる15億米ドルとし、ノートPCの通年シェアも7%から10%に拡大させたいとの考えを示した。
説明に矛盾点
しかし今回の提携に際し、双方が「出資や合併はない。企業、ブランドの独立性を各自が保持する」と強調したことに対し、工商時報は矛盾点を2点指摘している。1点目は「エイサーはライバルブランドの製品設計に参加し、方正は競争相手の製品を販売するのか」という点。2点目は「独立した企業のPC販売台数を合計してシェアを算出することは不可能」という点だ。
これについてエイサーのコメントは「今後専門チームを編成してさらなる提携の可能性を探る」のみで、具体的な内容を示していないが、工商時報は「もし資本提携に向かうのであれば疑問は氷解する」として、今後の動向に注目が集まると指摘した。また同日付蘋果日報は、エイサーが将来的な買収の可能性に言及しなかった要因として、中台間の企業合併についての規定が影響しているのではないかとの市場観測を伝えた。
【図】