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15年輸出総額10%減、レッドサプライチェーンで打撃


ニュース その他分野 作成日:2016年1月11日_記事番号:T00061402

15年輸出総額10%減、レッドサプライチェーンで打撃

 財政部が8日発表した2015年の輸出総額は前年比10.6%減の2,804億8,100万米ドルで過去5年で最低だった。2月以降11カ月連続での前年割れで、特に6月以降は7カ月連続で2桁減が続いた。財政部関係者は、昨年中国向け輸出が平均より減少したのは、中国政府の地場産業支援で勢力を増す「紅色供給網(レッドサプライチェーン)」による打撃と指摘した。世界景気の不透明感などからプラス成長を取り戻すのは下半期以降で、世界金融危機当時に並ぶ14カ月連続の前年割れもあり得ると警告した。9日付工商時報などが報じた。

 昨年12月の輸出総額は前年同月比13.9%減の220億6,000万米ドルで、10年5月以来の最低だった。電子製品は78億1,500万米ドル(7.3%減)、光学器材は10億7,400万米ドル(31%減)でうち光学レンズが25.7%減と2カ月連続の減少だった。

 財政部の葉満足統計処長は、今年1~3月のプラス成長は困難だが、減少幅は世界金融危機当時ほど大きくならないと予測した。09年の輸出総額は前年比20.3%減の2,036億7,500万米ドルだった。

中国向け、12%減

 輸出先別の昨年の輸出総額は、▽中国(香港含む)、1,092億9,400万米ドル(前年比12.3%減)▽東南アジア諸国連合(ASEAN)主要6カ国、500億1,900万米ドル(14.6%減)▽日本、192億8,600万米ドル(3.1%減)▽米国、342億5,700万米ドル(1.7%減)▽欧州、255億5,800万米ドル(11%減)──だった。

 品目別では、主力の電子製品が前年比4.4%減の956億300万米ドルだった。最も減少幅が大きかったのは鉱産物(119億3,100万米ドル、41.7%減)で、世界金融危機当時の39.1%減を上回った。全11品目のうち、交通運輸設備(117億4,700万米ドル、前年比0.8%増)を除く10品目で前年割れだった。

 葉統計処長は、輸出低迷は▽世界景気の減速▽中華圏の春節(旧正月、2016年は2月8日)向け需要の不振▽原料価格や原油価格の続落──が原因と指摘。国際原油価格(ドバイ原油価格)が1バレル45~50米ドルから昨年末に31米ドルまで38.5%下落し、購買意欲に打撃を与えたと分析した。その上で、昨年の輸出物価指数は8.9%下落しており、物価が輸出減の最大の要因だと説明した。

 行政院主計総処の関係者は、昨年第4四半期は短期消費刺激策などの効果で、個人消費が良かったので、今年1月末に発表する昨年通年のGDP(域内総生産)成長率は1%台を達成する可能性もあると話した。

電子製品需要が鍵に

 台湾経済研究院(台経院、TIER)景気予測センターの孫明徳主任は、輸出不振の要因として▽中国のレッドサプライチェーン▽通貨安競争による機械製品への打撃▽ハイテク製品の技術革新▽エネルギー価格の下落──を挙げた。輸出回復の兆しは、原油価格の下落が止まる第2四半期以降と予測。最近の円高、元安傾向が輸出に有利に働き、▽バーチャルリアリティー(VR)▽IoT(モノのインターネット)▽車両間通信ネットワーク(IoV、車のインターネット)──などが電子製品の輸出成長をリードすると指摘した。また、1月16日の選挙で決まる新総統が、中国のレッドサプライチェーンや、中台の物品貿易協定(未締結)にどう対応するかが重要と述べた。

15年輸入、16%減

 昨年の輸入総額は2,289億2,000万米ドルで前年比16.5%減だった。貿易黒字は515億6,000万米ドルで過去最高だった。資本設備の昨年の輸入額は365億7,000万米ドルで前年比1%減だった。うち精密機器が6.2%減、情報通信設備が5.6%減と、世界の不景気の影響が出た。

 一方、消費財の昨年の輸入額は前年比3.8%増の303億米ドルで、過去最高だった。特に▽携帯電話、15.4%増▽乗用車、9.4%増▽コスメシューティカル(機能性化粧品)、5.3%増▽紡織品、9.6%増──が大きく伸びた。ハイエンドスマートフォンや高級輸入車が全体を押し上げた。

【図】