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《台湾南部地震》TSMCに被害、12インチウエハー供給不足懸念


ニュース 電子 作成日:2016年2月15日_記事番号:T00061973

《台湾南部地震》TSMCに被害、12インチウエハー供給不足懸念

 6日に起きた高雄市美濃区を震源とするマグニチュード(M)6.4の台湾南部地震で、南部科学工業園区(南科)は初の全面操業停止に陥ったが、液晶パネル大手、群創光電(イノラックス)以外の企業が14日までに正常な生産態勢を回復した。13日までに南科の全工場を再稼働したファウンドリー最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は、第1四半期はウエハー出荷枚数が1%減少するが、出荷に影響はないと説明した。ただ業界関係者は、顧客が発注時期を前倒しし、12インチウエハーの供給不足は第2四半期まで続くと予測した。15日付蘋果日報が報じた。

 南科は台南園区、高雄園区(高雄市路竹区)を擁し、200社以上が入居する南部の重要なハイテク集積地だ。南部地震で最も深刻な影響を受けたTSMCとイノラックスの被害額はそれぞれ20億~30億台湾元(約70億~100億円)とみられている。

 TSMCの孫又文・企業情報処処長は14日、損壊したウエハーの再投入について顧客と協議しており、生産を急ぐと表明した。被害を受けたウエハーの枚数や金額は公表していない。

 業界関係者は、TSMCの第1四半期出荷枚数は12インチウエハー換算で200万枚で、被害は5万~6万枚と推測した。生産を急いでも出荷は3~4月となるため、稼動日の少ない2月は大幅な減収となりそうだ。

 TSMCの南科工場は、同社生産能力の20%を占める。Fab14は16・20ナノメートル製造プロセスの主力工場で、アップル、海信集団(ハイセンスグループ)、聯発科技(メディアテック)などが顧客だ。ある学者は、同社は今年、南科工場の追加投資を考えていたが、南部地震を受けて、今後の投資動向には観察が必要と話した。

 ファウンドリー大手、聯華電子(UMC)も南部地震で12インチ工場のウエハー数千枚の被害を受けたが、9日までに生産を再開した。もともと12インチ生産能力は不足気味で、中国の中芯国際集成電路製造(SMIC)の北京工場が2月1日に30時間の停電で12インチウエハー7,000枚を廃棄処分としていることもあって、需給ひっ迫が予想される。業界関係者は、半導体メーカーは現在在庫調整の最終段階のため在庫水準が高くなく、供給不足の懸念から、生産能力の取り合いになると予測した。

イノラックス、全面再開は3月か

 イノラックスは、南科に工場9基があり、火災が発生して一部施設や生産設備が被害を受け、ガラス基板も割れた。まだ生産能力の75%しか回復しておらず、全面操業は3月になる見通しだ。

 イノラックスは、第5工場(第5世代・月産能力2万2,000枚)が水道管の破裂で浸水するなど、一部の被害が深刻で、修理に時間がかかるが、顧客への出荷に影響はないと説明した。一方、市場調査会社、IHSの謝勤益シニア研究総監は、イノラックスの第5世代生産ラインのほか、瀚宇彩晶(ハンスター)の第5.3世代生産ラインも被害を受けており、5インチHD(高精細度)パネルの供給不足が深刻化すると予測した。

 またイノラックスは、南科の第6世代生産ライン(月産能力24万枚)で同社独自の39.5インチのテレビ用パネルを生産し、サムスン電子、中国のテレビ大手6社や中堅メーカーに出荷している。南部地震を受け、竹南工場(苗栗県)に急きょ生産を移転したが、認証を受け直さなければならず、供給不足が懸念されている。

耐震構造強化が奏功

 顧客のTSMCに合わせ、昨年より南科で生産している電子ビーム検査装置最大手、漢民微測科技(エルメス・マイクロビジョン、HMI)も、設備の調整を終え、出荷に影響はないと説明した。

 半導体パッケージング・テスティング(封止・検査)最大手、日月光半導体製造(ASE)の高雄工場、南茂科技(チップモス・テクノロジーズ)の台南工場は、一部の設備や生産中の製品が被害を受けたが、6日のうちに生産を再開した。

 太陽電池関連の▽茂迪(モテック・インダストリーズ)▽益通光能科技(イートン・ソーラーテック)▽新日光能源科技(ネオソーラーパワー、NSP)▽緑能科技(グリーン・エナジー・テクノロジー)──も6日、全面生産を回復した。

 ある企業は、南科は新しい工場が多く、被害が抑えられたと指摘した。1999年9月の台湾中部大地震で新竹科学工業園区(竹科)が100億元以上の被害を受けたことを教訓に、耐震構造を高めたことが奏功した。

 セメント最大手の台湾水泥(台湾セメント)は、住宅、道路、給水施設など復旧作業で、セメント出荷量が年間2~4%増えると予想を示した。昨年の台湾域内出荷量から計算すると、23万~46万トンに相当する。

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