ニュース 電子 作成日:2016年4月26日_記事番号:T00063787
アップルが2017~18年にスマートフォン、iPhoneに採用するとみられ、需要増加が見込まれる有機EL(OLED)パネルに中国、韓国、日本が国を挙げて取り組む中、台湾パネルメーカーは政府の支援がなく、競争から脱落する懸念が出ている。台湾メーカーは世界金融危機以降、財務状況が改善せず、投資規模が大きくリスクも高い新技術に資金を投じる余力がない。資金力がある鴻海精密工業は、シャープ買収によって2018年に有機ELパネルを量産する計画だが、経験不足から2年は遅れるとの予測が出ている。26日付工商時報などが報じた。
市場では、アップルはiPhoneパネルをLTPS(低温ポリシリコン)から有機ELに変更するとみられている。iPhone組み立ての大部分を受注している鴻海は、iPhoneパネルも受注したいところだが、みずほ証券はサムスンディスプレイ(SDC)、LGディスプレイ(LGD)、ジャパンディスプレイ(JDI)の3社が現時点でそれぞれ少なくとも、月6万枚以上、3万枚以上、1万5,000枚以上を供給しており、鴻海・シャープ陣営の受注は微妙と指摘した。
また、AUOの彭双浪(ポール・ポン)董事長は、技術向上には資金が必要だが、台湾の資本市場でハイテク産業の評価は低く、パネルメーカーの株価純資産倍率(PBR)も低く、大規模、継続的な投資が困難だと語っている。
AUOや鴻海傘下の群創光電(イノラックス)は、携帯電話向けAMOLED(アクティブマトリックス式有機EL)パネル市場にまだ参入できていない状況だ。
韓国勢、アップル専用ライン設置か
中国の「紅色供給網(レッドサプライチェーン)」が力を付ける中、韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、有機ELパネルを国家戦略産業に位置付け、来年から関連予算を編成する方針を示した。
SDCは16年下半期、LGDは18年下半期に第6世代新工場で有機ELパネルの量産を開始する予定だ。SDCの月産能力9万枚、LGDの月産能力4万5,000枚はアップル専用とみられている。両社は腕時計型ウエアラブル(装着型)端末、アップルウオッチに有機ELパネルを供給している。
中国政府からこれまでに70億人民元以上の支援を受けたとみられている中国パネル最大手、京東方科技集団(BOEテクノロジーグループ)は、四川省成都市に245億人民元(約4,200億円)を投じて、有機ELパネル生産ラインを設置する。19年に月産4万5,000枚に達し、韓国のSDC、LGDに迫る見通しだ。
深圳市華星光電技術(CSOT)は広東省深圳市のT2工場をAMOLEDパネル生産に切り替えることを検討している。中国で最も早くAMOLEDパネルを量産した上海和輝光電(エバーディスプレイ・オプトロニクス)もフレキシブルAMOLED投資を準備している。
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