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輸出前年割れ15カ月連続、過去最長に


ニュース その他分野 作成日:2016年5月10日_記事番号:T00064030

輸出前年割れ15カ月連続、過去最長に

 財政部が9日発表した4月の輸出総額は222億5,000万米ドルで、前月比2.1%減、前年同月比6.5%減だった。15カ月連続の前年割れで、世界金融危機当時の14カ月を上回り過去最長となった。行政院主計総処は、輸出総額が第2四半期の予測を下回ったため、今年のGDP(域内総生産)成長率予測1.47%を下方修正する見通しで、1%台を割り込む懸念もある。10日付工商時報などが報じた。

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 輸出総額は昨年6月から今年3月まで前年同月比2桁の減少率が続いていたが、4月は1桁台に改善した。財政部の葉満足統計処長はこの理由について、農工業の原料価格底打ちを挙げた。ただ、5月の見通しについて、昨年5月が通年最高の260億米ドルに達したため、前年比減少率が拡大し、16カ月連続の前年割れは確実との見方を示した。輸出総額のプラス成長転換は、早くても下半期との予測だ。

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機械以外が前年割れ

 製品別では、ほぼ軒並み前年割れで、唯一機械が17億9,000万米ドルで前年同月比2.4%増だった。葉統計処長は、台湾の航空機整備産業の発展に伴い、ターボジェットエンジン輸出額が前年同月比1億8,000万米ドル増え、13.7倍になったことが主因と説明した。

 電子製品は68億9,300万米ドルで前年同月比3.4%減。情報通信製品は23億8,100万米ドルで11.4%減で、うち携帯電話は2億8,000万米ドルと68.1%の大幅減少だった。液晶パネルなど光学器材は8億7,100万米ドルで15%減だった。

HTC発売遅れが打撃

 市場別では、▽中国(香港含む)、87億1,800万米ドル(前年同月比6.8%減)▽東南アジア諸国連合(ASEAN)、40億1,800万米ドル(4.5%減)▽米国、26億9,000万米ドル(12.7%減)▽日本、15億2,700万米ドル(4.8%減)──で、前年同月を上回ったのは欧州の22億3,900万米ドル(10.4%増)のみだった。

 葉統計処長は、対米輸出減少の原因として、宏達国際電子(HTC)のスマートフォンなど新製品の発売が5月にずれ込んだこと、および米国の製造業回帰で需要が減少していることを挙げた。

設備輸入は増加

 輸出総額はGDP(域内総生産)の5~6割を占めている。行政院主計総処は第2四半期の輸出総額を690億米ドルと予測しており、4月に230億米ドルを下回ったので、5~6月に回復しなければ、経済成長率に影響する。主計総処の官僚は、5月末の国民所得審議会で下方修正する見通しだが、1%を割り込むかについては何とも言えないと語った。

 中央大学経済系の邱俊栄教授は、今後2カ月も輸出総額は前年割れが続くと予測した。世界でマイナス金利政策の導入が広がり、「ゾンビ経済」(金利政策などによって、止まっているはずの企業活動がかろうじて存続している状態を指す)に陥っており、U字回復やV字回復でなく、L字回復になると予測。「新たな凡庸」(低い成長と低インフレが続く世界主要国の現在の状況を表す)がもたらす台湾への影響は大きいと指摘した。

 元大宝華綜合経済研究院の梁国源院長は、台湾の輸出総額は昨年11月からほぼ横ばいで、L字回復の底が続いていると分析した。

 一方、台湾経済研究院(台経院、TIER)の孫明徳・景気予測センター主任は、4月の設備輸入は前年同月比6.4%増で、今年は2月を除いてプラス成長が続いていることから、企業に受注があることがうかがえると分析。第2四半期に輸出総額や経済成長率がプラスに転じる可能性はあると述べた。

 4月の輸入総額は174億5,000万米ドルで、前月比4.2%減、前年同月比9.6%減だった。うち設備は17.6%を占め、30億6,900万米ドルで6.4%増だった。

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