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馬前総統の香港訪問に「待った」、蔡政権の不信感浮き彫り


ニュース 政治 作成日:2016年6月13日_記事番号:T00064640

馬前総統の香港訪問に「待った」、蔡政権の不信感浮き彫り

 馬英九前総統が今週15日に予定していた香港での講演について、総統府は12日、国家機密保護法を理由に渡航を認めない判断を下した。中台間の公式交流が中断した中で、同地で蔡英文政権に不利な発言をされることを避けるための政治的判断の可能性がある。不許可には法的な裏付けがあるものの、民主主義体制で退任した元首に対する措置としては異例で、蔡政権の馬前総統に対する不信感を浮き彫りにしている。13日付聯合報などが報じた。

/date/2016/06/13/00top_2.jpg黄重諺総統府報道官は、国家安全会議、国家安全局、外交部など6機関から意見を聴取し、慎重に決定したと説明した。香港訪問不許可は、政権内部の圧倒的多数の賛成で決まったとされる(12日=中央社)

 総統府は不許可の理由について、▽退任からわずか1カ月で、機密保持の必要性が高い▽馬前総統が任期内に接した国家機密について時間をかけて精査する必要がある▽台湾にとって香港はセンシティブ地域で、リスク管理の難易度が高い▽訪問期間中の警備など香港政府の協力が必要だが、前例がなく、準備時間が足りない──と理由を説明した。

 総統経験者など国家機密に触れた要人は離任・退任後の3年間、出境の際に審査を受けることが2003年公布の国家機密保護法で義務付けられている。総統経験者は出境20日前までに申請を行う必要があるが、今回馬前総統による申請は14日前の6月1日だった。ただ総統府は、申請の遅れよりも訪問そのものを問題視した。

 馬前総統は、アジア出版業協会(SOPA)の招きで香港に日帰り訪問し、「卓越報道賞」の授賞式に出席して英語での講演を予定していた。アジア出版業協会は、残念だが馬前総統の講演はビデオ通話での中継に変更すると発表した。

「自由民主のイメージにマイナス」

 馬英九事務室は、前総統を尊重せず、台湾の自由民主主義のイメージを傷つける決定だと蔡政権を批判した。香港滞在時間はわずか7時間で、全スケジュールを公開し、プライベートの時間は一切ないと強調。申請却下の理由は他にあるのではないかと、不当な政治的判断であることを示唆した。

 これに対し民進党は、法に基づいた正確な判断だと評価。同党立法委員からは「中国や香港への訪問は慎重であるべきだ」、「許可していればむしろ問題だった」などの声が上がった。同党寄りの自由時報は、中台の政府間交流が停止した中で、申請却下は当然と論じた。

 なお、中国国務院台湾事務弁公室(国台弁)の安峰山報道官は記者団に対し、仮定の質問には答えられないが、中国は注意を払っているとコメントした。

独立派からの批判回避か

 中山大学政治研究所の廖達琪教授は、蔡総統は独立派から批判を浴びるリスクを避けるため、申請を却下したと分析した。支持勢力の内部バランスを考慮したとの見方だ。

 国民党の費鴻泰立法委員は、李登輝元総統が退任直後に英国を訪問した例を挙げて、蔡政権はダブルスタンダートだと非難した。総統府は、当時はまだ国家機密保護法が制定されておらず、馬前総統が初の適用ケースだと説明した。