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ATM不正出金事件、利用停止1200台に


ニュース 金融 作成日:2016年7月13日_記事番号:T00065199

ATM不正出金事件、利用停止1200台に

 第一商業銀行(ファースト・コマーシャル・バンク)の現金自動預払機(ATM)42台から4日間で8,390万台湾元(約2億7,000万円)がハッキングにより不正に引き出された事件を受け、金融監督管理委員会(金管会)は12日、同じ型式のATM4,999台を使用している銀行21行に対し、1カ月以内に安全対策を講じるよう指示した。市場シェアは2割近く、現在は約1,200台が利用停止となっている。銀行業界では事件を受け、スマートフォンを使ったATMサービスの拡大を当面見送る動きも出ている。13日付経済日報などが報じた。

/date/2016/07/13/00atm_2.jpg市民からは、ATMが使える第一銀の支店を探すのに一苦労だと苦情が聞かれた(12日=中央社)

 利用停止となっているATMは、▽第一銀、432台▽中華郵政、259台▽合作金庫商業銀行、196台▽兆豊国際商業銀行(メガ・インターナショナル・コマーシャル・バンク)、100台▽台湾銀行、92台▽華南商業銀行、86台▽彰化商業銀行(CHB)、39台──など。早ければ2~3日以内に利用再開となる見通しだ。

5分で犯行終了

 容疑者のロシア人、ベレゾウフスキー(34)とバークマン(28)は7日に観光ビザで台湾に入境し、8~11日にかけて台中市、台北市、新北市にある第一銀の支店23店のATMで現金を入手し、11日午前7時すぎの便で香港に逃亡した。8日は台風1号(アジア名・ニパルタック)上陸により政府機関や学校を休みにする「台風休暇」措置が取られ銀行も休業、9~10日は週末だった。

 監視カメラの映像によると、容疑者2人は帽子、マスクを着用しており、ATMには全く触れていないのに次々と吐き出される現金を袋詰めし、5分足らずで犯行を終えていた。台北市の古亭支店での4回目の犯行で、現金6万元が残っていたのを市民が見つけ、警察に通報した。2人の他にも、台中で犯行を行っていた仲間がいたとみられている。

 警察・検察の調べによると、被害に遭ったATMは悪意のあるウイルスに感染しており、遠隔操作で現金を出金できるようになっていた。外部のメンテナンス業者の関与が疑われている。ウイルスは「cngdisp.exe」「cngdisp_new.exe」の2種類。第一銀のデータベースに侵入し、送金した形跡はなかった。

/date/2016/07/13/00atm2_2.jpg犯行時の監視カメラ。警備が手薄な週末が狙われた(12日=中央社)

ATM更新があだに

 銀行関係者によると、第一銀のATM768台のうち、432台が米ディボールド(独ウィンコール・ニックスドルフを買収)製「プロキャッシュ1500XE」だった。同社製ATMは10年前に最もよく使われていた。現在は日立、ディボールド、NCRが台湾市場シェア上位だ。

 銀行関係者は、第一銀が狙われたのは最近ソフトウエア更新を行ったところで、原本がメーカーにあったことも理由と分析した。第一銀は、キャッシュカードがなくても、インターネットバンキングのスマートフォンアプリを使ってATMから現金を引き出せる新サービス開始に対応するため、ATMプログラムの更新を行っていた。

 彰化商業銀行(CHB)は9月、華南商業銀行は11月に同様のサービス開始を計画していたが、安全が確保できるまで延期する方針だ。第一銀をはじめ、兆豊銀行、台新国際商業銀行(台新銀行)、中国信託商業銀行(CTBCバンク)などが今年、同様のサービスを開始している。

 英国の専門家は、金融とIT(情報技術)を融合する「フィンテック」はチャンスだけでなく、リスクももたらすと警告した。

保険料1割上昇も

 金管会の統計によると、台湾には2万7,000台のATMがあり、人口に対する設置密度は世界10位以内、アジア3位。年間取引額は9兆6,000億元に上り、現金取引が多いためATM1台当たり200万元以上が準備されている。今回の事件は、口座からの不正出金ではなかったため、発覚が遅れた。

 台湾での銀行ATMハッキング事件は初めて。欧州で2014年に775万元相当の被害が出るなど、世界ではATMハッキング事件が毎年のように発生しており、ロシアのコンピューターセキュリティー会社、カスペルスキーやインターポール(国際刑事警察機構)が警告を繰り返していた。

 また、台湾では今年1月に京城商業銀行(キングズ・タウン・バンク)のATM盗難事件で現金被害411万8,000元とATM25万元に対する保険金が支払われており、来年の銀行業界の損害保険料は1割以上高くなる見通しだ。