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不当党資産処理条例が成立、国民党に打撃


ニュース 政治 作成日:2016年7月26日_記事番号:T00065453

不当党資産処理条例が成立、国民党に打撃

 野党国民党を事実上狙い撃ちにし、長年蓄積した党資産の清算を迫る「不当党資産処理条例」が25日、立法院臨時会で成立した。26日付自由時報などが伝えた。

/date/2016/07/26/18kmt_2.jpg法案成立後、野党時代から長年同条例の成立を目指した民進党の立法委員はこぶしを突き上げ、「台湾人民の勝利だ」と叫んだ(25日=中央社)

 同条例は政党が1945年以降に取得した財産について、党費と政治献金などを除いた部分を不当に取得した資産と推定し、国有化する内容だ。条例成立を受け、行政院は「不当党資産処理委員会」を設置する。

 臨時会は67回の採決を重ね、10時間近くに及んだが、当初2日かかる予定だった採決は、法案成立阻止は難しいと判断した国民党が議場での発言要求を一部取り下げ、大幅に短縮された。

 国民党は長年政権の座にあり、多くの国家財産や日本から接収した資産を不透明な形で党に帰属させたとされ、「世界一の金持ち政党」と呼ばれてきた。潤沢な資産で強大な支配機構を構築してきた国民党だったが、台湾民主化が進むにつれ、不透明な党資産の実態を解明すべきだとの声が高まった。民進党は過去5期の立法院で同条例の成立を目指したが、与党国民党によって否決され続けた。民進党は今年1月の立法委員選で初めて立法院での過半数を握り、ようやく条例成立にこぎ着けた。

 今年3月の法案審議当時の資料によれば、国民党とその付属組織が取得または使用している国家資産は土地679区画、面積110.25ヘクタールで、今年の公告土地現値(路線価)に基づくと805億台湾元(約2,620億円)相当となる。

法執行は難航か

 行政院が設置する不当党資産処理委員会は11~13人で構成され、政党が不当に取得した資産の調査、返還、追徴、権利回復を進める。しかし、不当党資産の認定方法や証拠認定の面でさまざまな論議を呼ぶのは必至で、法案国民党の資産を過去にまでさかのぼって精査して国有化するには障害がある。

 同委は3分の2以上の委員が出席し、出席委員の過半数が賛成することで不当党資産の返還要求決議を行う。しかし、最終的には裁判所に判断が持ち込まれるケースが多いとみられ、同委の決議だけでは不当党資産の回収は難しい見通しだ。

 台湾大学政治学部の葛永光教授は「どうやって『不当』だと認定するのかをめぐり論議を呼ぶことになるのではないか」と指摘した。

歴史がこの日を記憶する=蔡総統

 法案成立を受け、蔡英文総統はフェイスブックを通じ、「歴史がこの日を記憶することになるだろう」とコメントした。

 総統府の黄重諺報道官は、「国民が政治の革新を長年強く期待してきたことに前向きに応えるもので、台湾の民主政治が成熟した発展段階に向かう一里塚となる。正義のモデルチェンジの初歩的な実現でもある」とする蔡総統の立場を説明した。

 民進党の黄適卓広報は「不当党資産による政党の不公平な競争を共同で解決し、台湾の民主を健全化させることを期待している」と述べた。

台湾人民の悲哀だ=国民党主席

 一方、国民党の洪秀柱主席は「不当党資産処理条例は違憲、違法であり、民進党は多数の暴力で法案成立を強行し、一党独裁の政治環境をつくり出そうとしている」と批判した上で、「これは台湾人民、台湾の民主にとって悲哀だ。正義に反する密室作業には徹底抗戦していく」とした。

 国民党は今後、同条例が違憲、違法だとする立場で違憲立法審査に持ち込むことも検討している。