馬英九次期総統は2日、ロイター通信のインタビューに対し、台湾域内での人民元と台湾元の両替を、遅くとも今年の年末までに全面開放するという方針を初めて明らかにした。通貨は主権と密接に関係しているため、中台経済交流の各項目の中でも比較的実現が難しいという見方もある。しかし、開放されれば経済交流のボトルネックの一つが解消され、中台の経済的結び付きがさらに強まることは間違いない。3日付中国時報などが報じた。
2日夜、有権者へのお礼のため花蓮に向かう馬英九次期総統(中央社)
馬次期総統は台湾での人民元両替について、中国人観光客に対する観光開放などの推進によって必要性が生じると指摘。「経済、貿易の交流が深まれば、台湾は人民元を拒否する理由はない」と強調した。
これについて陳明通行政院大陸委員会(陸委会)主任委員は同日、「人民元両替の全面開放は、決算メカニズムの取り決めが必須だ。政治面にかかわり難度がやや高い。しかし、我々は人民元の両替を部分的に始める準備ができており、いつでもスタートできる」とコメントした。
台湾での人民元の両替については、彭淮南中央銀行総裁が先月下旬、人民元の安定した準備高を確保するためには中国側との協議が必要なため、当面は「人民元の買い取り」業務のみでスタートし、「台湾元から人民元への交換」は後回しにするという考えを語っていた。
なお、彭総裁も当時、「人民元両替が開放されれば、取引量は米ドルを上回る」と、非常に大きな需要があることを指摘している。
台湾は2005年10月より、金門と馬祖に限定して人民元の両替に試験的に着手している。旅行客の出入境に当たっては2万人民元(約29万円)が、持ち込み、持ち出しの上限と定められている。
中国人観光客、4年後に1日1万人
馬次期総統は、5月20日の就任後に、中国人観光客への観光開放、週末の直航チャーター便就航に直ちに取り組むという考えを改めて語った。
中国人観光客については、最初の1年は1日当たり3,000人の枠内で開放し、年間で延べ111万人が訪台し、通年で600億台湾元(約2,025億円)のビジネスチャンスと4万件の雇用機会を生み出すと試算している。1日当たりの受け入れ観光客の上限は、2年目5,000人、3年目7,000人、4年目1万人と段階的に拡大していく。
このほか、中国企業に対し台湾での企業設立や工場設置の投資も認めることや、台湾企業に対しても、本部を台湾に置いている限り、現行法規では純資産の40%までとされている対中投資額の上限規制を撤廃する考えを語った。
胡主席と将来の会談を希望
馬次期総統はまた、いつかは胡錦濤中国国家主席と会談したいという希望を語りつつ、「現在の両岸(中台)情勢では、短期間では不可能だ」という見方も示した。北京五輪に出席してみたいかという質問に対しては、「興味がある」としつつも、「恐らく実現しないだろう」と回答した。
消費好転でGDP押し上げ
域内経済については、「国民党の勝利で消費が明らかに好転した。これが続けば今年の域内総生産(GDP)は1%上昇する。今年の経済成長率は5%を維持し、来年は公約の6%を達成できると信じている」と語った。
このほか、今年度予算案の改訂版を迅速に 提出し、公共支出の増加によって内需拡大を図る方針も示した。