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軍公教14万人、年金改革に抗議デモ


ニュース 社会 作成日:2016年9月5日_記事番号:T00066210

軍公教14万人、年金改革に抗議デモ

 蔡英文政権が取り組む年金改革を批判する大規模デモが3日台北市中心部で行われ、主催者側発表で25万人、台北市警察局発表で14万5,000人が参加した。軍人・公務員・教員(軍公教)の退職者と労働団体が中心で、給付水準引き下げへの抗議を示した。蔡政権発足以降、大規模デモが行われたのは初めて。軍公教の年金受給額は一般労働者を大幅に上回っており、「既得権益を守るためのデモ」と冷ややかな視線を浴びせる市民も多かった。

/date/2016/09/05/00demo_2.jpgデモは「汚名に反対し、尊厳を求める」をスローガンに行われ、蔡総統に批判が浴びせられた(3日=中央社)

 蔡政権はまだ年金改革の具体案を提示していないが、軍公教側は受給額の引き下げ議論を政府による「いじめ」と反発。3日のデモの参加者は事前予想の10万人を大きく上回った。主催した「監督年金改革行動聯盟」は、受給額引き下げに反対し、年金改革を監督するとして、政権側から善意ある回答が示されない限り再度の大規模デモも辞さないと宣言した。

労働者賃金を上回る年金額

 台湾は公務員と一般労働者の間で年金受給額に大きな差が存在する。総統府国家年金改革委員会が今年7月に明らかにした統計では、1カ月当たりの平均受給額は、退職した元公立学校教職員(約12万人)が6万8,000台湾元(約22万4,000円)で、元公務員(約13万5,000人)が5万6,000元、退役軍人(約12万人)が4万9,000元だ。一方、約73万人に上る一般労働者の労工保険年金の平均受給額は1万6,000元にすぎない。企業従業員の2015年の経常性給与(賞与、残業手当などを含まない基本賃金)の平均額は3万8,716元、ボーナスや残業代を含めた平均給与額は4万8,490元で、軍公教の多くが一般労働者の賃金を上回る年金を手にしている。

 軍公教にはさらに退職金の預金に対し18%もの利息が付く優遇も受けており、年金水準と合わせて不公平さが強い批判を浴びてきた。

 高水準の年金支給を行ってきた結果、軍公教の年金基金は破綻寸前で、公務員の任官や退職などの事務を担当する考試院銓敘部によると、同基金の負債額は既に2兆3,000億元に上る。軍人年金基金は20年に、教職員基金は30年、公務員基金は31年に破綻し、退職金原資が払底する見通しで、このため、その後の財源確保と一般労働者との受給額の不公平税制のため、軍公教の受給額を引き下げる形での年金改革は待ったなしの状況だ。

「国是会議で意見募る」

 デモに対し総統府と行政院は、「改革は特定の職業に汚名を着せるものではない」と表明。年金改革委員会が10月と11月に北部、中部、南部、東部の4地域で座談会を開き、来年1~2月に国是会議を開いて広く意見を徴集すると説明した。

 総統府は張文蘭報道官が「社会の多数の声は年金財源の永続と子孫の負担軽減である」と述べ、年金改革は幅広い層の支持を得ているとの認識を示した。蔡総統も4日、改革への不退転の決意を示すとともに、年金問題では若者に意見を多く表明してほしいと述べた。

 ちなみに軍公教は年金をもらい過ぎで、年金改革は必須と考える教師や公務員も少なからず存在する。教職者団体は今回、全国教育産業総工会(全教産)がデモに参加した一方、全国教師工会総聯合会(全教総)、台湾教師聯盟、私立教師年金改革聯盟はデモを批判し、蔡総統に改革断行を呼び掛けた。