大型で非常に強い台風17号（アジア名・メーギー）が27日午後に７時間かけて台湾中部を横断し、各地に豪雨と強風をもたらした。風速56メートル以上の強風により、日本人ツアー客が乗車する観光バスが彰化県の高速道路で横転して８人が負傷するなど、内政部消防署によると、台湾全土で４人が死亡、662人が負傷した。停電は401万世帯と過去２番目の規模、新北市を中心とする断水は29万世帯に上り、ライフラインも大混乱となった。29日付蘋果日報などが報じた。

日本人ツアー客は２泊３日で27日に帰国予定だった（27日＝中央社）

　台風17号の影響により、太平山（宜蘭県南澳郷）で28日午後５時半までの総雨量が1,136ミリと1,000ミリを超えた。台中市梧棲、宜蘭県蘇澳では、観測史上初の風力階級17（56.1～61.2メートル）を観測したほか、宜蘭県で風力階級15（46.2～50.9メートル）、台北市で風力階級13（37～41.4メートル）など、各地で強風が吹き荒れた。

　強風により高速道路では大型車両の転倒が相次ぎ、27日午後３時ごろフォルモサ高速公路（国道３号）を走行していた観光バスの横転で、ツアー参加の日本人29人のうち８人（男性２人、女性６人）が負傷した。うち１人の女性（57）は脳内出血で重傷となっている。同日午後１時ごろには、台湾鉄路（台鉄）台中駅前で建設中の24階建てホテル、 台中李方艾美酒店（ルメリディアン台中）の工事現場の足場が落下し、走行中の乗用車の助手席に乗車していたマレーシア人女性（24）が重傷、近くにいた台湾人女性（37）が軽傷を負った。

　豪雨により、高雄市や台南市では深刻な浸水が起きた。高雄市旗山区渓洲では28日に一時、胸の高さまで浸水した。自動車や家具も水に浸かり、市民からは、2009年８月に台湾南部を襲った台風８号（アジア名・モーラコット、通称・88水災）よりひどいと嘆く声が聞かれた。

高雄市旗山区や美濃区では、膝の高さまで浸水した（28日＝中央社）

　高雄市燕巣区の山間部では28日午前10時ごろ、土砂崩れで２階建て家屋の１階部分が土砂に埋まった。逃げ遅れた住民３人の救出活動が続いている。

水道・電力・ネットもまひ

　27日は国際線155便、台湾域内線271便、28日は国際線58便、域内線234便が欠航となった。台湾高速鉄路（高鉄）、台鉄は27日から運休とし、28日午後１時までに順次復旧した。

　台湾電力（台電、ＴＰＣ）によると、停電は401万世帯と、昨年８月の台風13号（アジア名・ソウデロア）の449万世帯に次ぐ規模となった。28日午後10時時点で復旧していないのは35万8,000世帯。強風により倒れた電柱は600本と、９月14日に南西部沖を通過した猛烈な台風14号（アジア名・ムーランティ）の487本を合わせると約1,100本に上った。

　国家通訊伝播委員会（ＮＣＣ）によると、台風17号の影響により、9,956世帯の固定電話が不通となり、基地局は１万3,700基が損壊した。28日夜の時点で基地局47％が故障したままだ。

　台北市や新北市の一部を供給地域とする台北自来水事業処は新店渓上流の原水濁度の上昇を受け、27日午後４時から28日午前６時まで取水を停止した。これにより新北市淡水区、汐止区、深坑区などで給水が停止。量販店大手、家楽福（カルフール）の店頭や愛買（ａマート）のインターネット通販サイトでは飲料水の販売が３～５倍に増えた。水の供給は現在、約１万世帯を除きほぼ復旧した。

ネギ全滅、宜蘭の被害1.4億元

　行政院農業委員会（農委会）の統計によると、農作物や農業施設の被害は29日午前11時時点で13億1,929万台湾元（約42億6,000万円）に上った。県市別では▽雲林県、28％▽台中市、14％▽高雄市、14％▽宜蘭県、11％──の順。三星ネギで有名な宜蘭県は、被害額が１億4,746万元に上った。

ＰＣＢ、出荷遅延も

　災害防止の観点から行政機関や学校を休みにする「台風休暇（停班停課）」が27日、28日と２日間続き、９月末に出荷を予定していたプリント基板（ＰＣＢ）メーカーの▽台郡科技（フレキシウム・インターコネクト）▽臻鼎科技控股（ＺＤＴ）▽燿華電子（ユニテック・プリンテッド・サーキット・ボード）▽華通電脳（コンペック）──などの出荷が10月にずれ込みそうだ。