絶大な人気を誇りながら昨年引退した台湾語歌謡界のスター、江蕙さん（55）が先ごろ、弟の自宅に強盗が押し入った現場に居合わせ、もみ合いになった結果、犯人が持っていた凶器で負傷していたことが明らかとなった。

　江蕙さんの家族は現在、知的障害を抱える弟を含め多くが新北市淡水区のマンション「楓丹白露」の別々の階に分かれて住んでおり、彼女もたびたびここを訪れている。事件が起きた18日も江蕙さんはクリスマスパーティーの準備のため、同マンション２階の部屋で料理の仕込みを行っていた。すると突然、弟が暮らす６階の部屋から叫び声が聞こえてきた。

　江蕙さんが慌てて駆け付けると、顔面血だらけになった弟が泣き叫んでおり、その前に見知らぬ男が包丁とドライバーを持って立っている場面が彼女の目に飛び込んできた。これを見た彼女は弟を守ろうと２人の間に割って入ろうとしたが、男は彼女を羽交い締めにした上、喉元に包丁を突き付け、「金庫を開けて金と宝石をよこせ」と脅した。

　しかし、弟の自宅に金庫はなく、金や宝石も保管しておらず、江蕙さんは男に事情を説明して落ち着くよう説得を試みた。そしてそのまま膠着（こうちゃく）状態が20分ほど続いた後、彼女は機を見て男の腹に肘打ちを食らわせ、凶器を奪い取ろうともみ合いになった。

　その際、江蕙さんは包丁で手を切ったほか、男に押し倒されて頭を床に打ち付けるなどしたものの、女性の使用人も男の腰に抱きついて加勢したことから、形勢不利とみたのか凶器や着ていた服を残したまま逃走した。

　その後の調べによると男は同マンションの元清掃員、陳金標容疑者（58）で、警備員の服を着て変装し「顧客と契約について話がある」とマンション入口の管理員を騙して内部に侵入。江蕙さんの弟ものぞき窓から制服姿の男を見て、届け物を持ってきたのだと思い中に入れたという。

　なお事件を警察に通報した当初、江蕙さんは自分の身分が明らかになれば捜査に支障が出ると考えて彼女が関係していることを公開しないよう警察に要求。陳容疑者が21日に逮捕されたことから同日、フェイスブック上で事情を説明した。同ページのコメント欄には彼女の無事を喜ぶ声や勇気を称える声が数多く寄せられている。