ワイズコンサルティング・グループ

HOME サービス紹介 コラム グループ概要 採用情報 お問い合わせ 日本人にPR

コンサルティング リサーチ セミナー 経済ニュース 労務顧問 IT 飲食店情報

《TSMC張忠謀董事長引退》TSMCポスト張忠謀時代へ、董事長・総裁で分業構築


ニュース 電子 作成日:2017年10月3日_記事番号:T00073211

《TSMC張忠謀董事長引退》TSMCポスト張忠謀時代へ、董事長・総裁で分業構築

 ファウンドリー世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)は2日、来年6月で張忠謀(モリス・チャン)董事長(86)が引退し、共同執行長(CEO)の劉徳音(マーク・リュウ)氏(63)が董事長、魏哲家氏(64)が総裁に就任すると発表した。ポスト張忠謀時代について証券会社は、最先進プロセスの3ナノ工場の建設地を南部科学工業園区(南科)に決定するなど2025年までのロードマップが固まっており、引き継ぎの準備は万全だと指摘した。IoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)、車載用など新市場にも注力することで、今後3~5年は成長が確実な見通しだ。3日付経済日報などが報じた。

/date/2017/10/03/00tsmc_2.jpg張董事長(中)は、劉氏(右)と魏氏(左)は、エンジニアだったのがすっかり経営者らしくなったと評した(2日=中央社)

 「半導体の父」と呼ばれる張董事長は同日、ファウンドリーという世界初のビジネスモデルを構築し、世界首位の座に君臨し、台湾を半導体産業の重要拠点にしたと、TSMCでの30年を振り返った。もしTSMCがなければ、スマートフォンはこんなに早く発明されず、世界数十億人の生活を変えることはなかったと語った。また、後継2トップ体制は張董事長のTSMCへの最後の貢献であり、1+1=2以上の効果を生み、TSMCに再び奇跡をもたらすと期待感を示した。

 劉氏は董事長就任後、TSMCの代表者として董事会を率い、最終的な意思決定を行う。魏氏は総裁就任後、董事会の下で会社の戦略、戦術、経営方針を策定し、TSMCを経営する。張董事長は、劉氏と魏氏の意見が割れても董事会が役割を果たすと説明した。

 創業董事長の多い台湾では近年、複数の後継者による共同経営が増えているが、実質トップは董事長が務めている。業界では、後継者レースでは敗者が競合に転職することが最大の問題となるため、張董事長は2トップ体制をうたっているとみられている。

4年の相互理解期間

 劉氏は1993年にTSMC入社したたたき上げだ。99年末にTSMCが買収した世大積体電路の総経理、TSMCの先進技術事業資深副総経理、営運資深副総経理(TSMC初の12インチウエハー工場の責任者)などを歴任した。細身で長身、穏やかな語り口で、目立つことを好まないことから、穏着沈黙の武将といわれている。

 魏氏はシンガポールのチャータード・セミコンダクターの上級副社長などを経て、98年にTSMCに入社。南工場区営運副総経理などを歴任した。TSMCの業績発表会などでは劉氏が主に説明し、魏氏の声を聞くことは少なかったが、従業員との会話を楽しむユーモアあふれる性格。張董事長はこれまで劉氏に意見を尋ね、劉氏に判断させることがあり、こうした経験から両者は相互補完が可能と考えたようだ。

 証券会社のアナリストは、劉氏と魏氏は過去4年間で相互理解が進んでおり、2トップ体制に移行後も問題はないとの見方を示した。

引き継ぎに12年

 張董事長は31年生まれ。米テキサス・インスツルメンツ(TI)上級副社長などを経て、85年に台湾に戻り、工業技術研究院(工研院、ITRI)院長に就任、86年に政府の出資を受けて設立されたTSMCの董事長に就任した。

 TSMCは設立当初の従業員100人余りから現在4万7,000人まで拡大した。昨年の連結売上高は前年比12.4%増の9,479億台湾元で過去最高を更新した。今年の連結売上高は1兆元(約3兆7,000億円)の大台に乗ると見込まれている。

 劉氏と魏氏は12年3月、蒋尚義氏(研究発展資深副総経理)とともに、張董事長の後継者候補として執行副総経理兼共同営運長(COO)に就任した。蒋氏は13年10月末で引退し、劉氏と魏氏の2人が13年11月に総経理兼共同執行長に昇格したが、最終的な意思決定は張董事長が行っていたとされる。張董事長は来年6月に董事も退き、TSMCの経営から一切手を引くため、本格的なポスト張忠謀時代に突入する。

 TSMCは05年7月から蔡力行氏に総執行長を任せていたが、世界金融危機発生後、09年6月に張董事長(当時78)が総執行長(CEO)に復帰し、立て直しのかじを取るなど、高齢の張董事長の後継者選びが長年の課題だった。