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「楽器が雨にぬれる」と舞台去る、バイオリニストに支持の声


ニュース 社会 作成日:2017年10月13日_記事番号:T00073371

「楽器が雨にぬれる」と舞台去る、バイオリニストに支持の声

 台東県で10日夜に開かれた国慶節(双十節)祝賀イベントでオーケストラが演奏していた際に雨が降り出し、雨をよける屋根が設置されていなかったことから、楽器がぬれることを心配した女性バイオリニストが演奏を中断してステージから立ち去ったことが議論を呼んでいる。ただ、彼女の行動を支持し、主催者の天候対策を不十分と批判する声が大半を占めているようだ。

/date/2017/10/13/kakomi_2.jpg馮楚軒さんは16歳でフランスに渡りパリ国立高等音楽院などで学び、国際コンクールで優勝した経験も持つプロのバイオリニスト。今回の事態は、地方公務員の芸術に対する理解の薄さが背景にありそうだ(馮楚軒さんフェイスブックより)

 台東森林公園で開催された今回の国慶節イベントは2,000人を超える観衆を集め、10日午後5時にスタートした。しかし6時ごろから雨が降り始め、ステージ後方で登場を待っていたオーケストラ「台東回響楽団」のメンバーは楽器がぬれないようあわててシートを被せた。

 その後、雨がやんだため、楽団は大急ぎで準備を行い演奏を開始したが、5分もたたないうちに再び降り始めた。すると突然、同楽団のコンサートマスターを務めるバイオリニスト、馮楚軒さん(37)が椅子から立ち上がり、早足でステージから立ち去ってしまった。

 これを見た他のメンバーの中には彼女にならって腰を浮かす者もあったが、ためらった後に思い直して演奏を続けた。しかしその後も雨脚は強まる一方で、結局、演奏は中止となり、全員が舞台から避難した。

 ステージを立ち去った馮さんはその夜、フェイスブック(FB)上で「みんなの楽器を守るため、コンサートマスターとして率先して立ち去るしかなかった」と説明。その上で「デザインや花火に1,000万台湾元もの予算をかけながら、3万元の雨除けも用意できないのか」と主催者の不手際を批判した。

 これに対し、台北芸術大学音楽学院の蘇顕達院長が「私でもステージを去る」とコメント。台湾師範大学音楽系の陳沁紅教授は「雨よけなどの対策は演奏者に対する最低限の礼儀だ」など、音楽界からは彼女の行動を支持する声が相次いだ。

 音楽家にとって楽器は命の次に大切ともいえる商売道具で、特にプロが使用するバイオリンは最低でも100万元以上の価値があるという。さらに当日夜の台東の天気については早くから雨が降るとの予報が出ていたにもかかわらず、対策が講じられなかったことは完全に主催者の手落ちといえるだろう。

 批判を受けて主催者の台東県政府は、雨よけを用意しなかったことについて「観衆が花火を見られなくなくことを懸念したため」と釈明し、「お叱りを謙虚に受け止める」と反省の弁を述べている。