ニュース 電子 作成日:2017年10月25日_記事番号:T00073560
携帯電話用半導体最大手の米クアルコムが今月11日、公平交易委員会(公平会、公正取引委員会に相当)より公平交易法(独占禁止法に相当)違反で課徴金234億台湾元(約880億円)を科されたことを受け、工業技術研究院(工研院)との産業提携プロジェクトのうち5G(第5世代移動通信システム)投資や研究開発(R&D)交流を中断したことが明らかになった。経済部の複数の関係者は、クアルコムの台湾投資は台湾ネットワーク産業の発展に多大な貢献をもたらすため、提携打ち切りにならないことを祈っていると懸念を示した。25日付自由時報が報じた。
工研院資訊通訊研究所(資通所)のクアルコム提携プロジェクト責任者は24日、管碧玲立法委員(民進党)の指摘を受け、クアルコムから今月中旬にプロジェクト中断の通知があったことを認めた。クアルコムとの5G提携プロジェクト期間は4年で現在まだ1年目だ。研究開発部隊は工研院、国家中山科学研究院(中科院)、資訊工業策進会(資策会)などの約200人で構成される。台湾は従来、移動通信技術で世界に遅れを取っていたが、5Gでクアルコムとエアインターフェース仕様の小型基地局の共同開発に成功すれば、台湾ネットワーク各社がカスタマイズした関連製品を開発できると商機が期待されていた。もし提携プロジェクトを続行できなければ台湾にとって残念な事態で、今は待つしかないと語った。
管立法委員は、次世代にとって非常に重要なAI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)産業で、クアルコムは世界最多の関連特許を保有し、最先端の技術を持っている上、中国や韓国とクアルコムの関係がそれほど良くないので、クアルコムとの提携は台湾にとって大きなチャンスとの認識を示した。
経済部の龔明鑫政務次長は、今後推進する「アジア・シリコンバレー計画」のIoTコア構築でも、クアルコムの台湾投資は多大な貢献が期待でき、心変わりがないことを望むと語った。
ある経済部の関係者は、産業界に重大な影響をもたらす決定をする場合、以前は公聴会を通じて公平会に説明する機会があったのに、今回はそうした手順を踏んでおらず、経済部や産業界を驚かせたと話した。
公平会の彭紹瑾副主任委員は、クアルコムの投資や提携の中断については聞いておらず、当会の処分は既に確定しており、コメントできないと語った。
クアルコムは処分を不服とする場合、通知受領から2カ月以内であれば台北高等行政法院に不服申し立てが可能だ。
234億元に「根拠不明」
公平会の決定について中華民国全国工業総会(工総、CNFI)理事長を務める受託生産大手、仁宝電脳工業(コンパル・エレクトロニクス)の許勝雄董事長は、課徴金234億元の計算根拠が不明だと指摘した。和碩聯合科技(ペガトロン)の童子賢董事長も、クアルコムは取引先のためコメントは控えるが、課徴金の計算根拠が分からないと語った。また、公平会の判断は台湾メーカーに直接の影響はなくとも、世界中の大手携帯電話ブランドとサプライヤーの間で商談成立が見送られていると話した。
台湾の携帯電話ブランド大手、華碩電脳(ASUS)と宏達国際電子(HTC)の世界市場シェアは計1.94%にすぎないものの、公平会の課徴金は234億元と、中国当局による274億元(携帯電話ブランドの世界シェア36.04%)、韓国当局による256億元(世界シェア26.76%)とそれほど変わらない。また、鴻海精密工業、コンパル、ペガトロン、緯創資通(ウィストロン)の受託生産大手4社も今年7月に米国で、クアルコムの特許使用料が高過ぎると提訴したが、受託4社はアップルの代わりにクアルコムの特許使用料を支払っているため、米国の競争当局が処罰するべき問題といえる。こうしたことから、台湾の公平会の課徴金は高過ぎると自由時報は指摘した。
なお、クアルコムは大量の標準必須特許(SEP)を保有しているため、携帯電話メーカーはクアルコム製以外の半導体チップを購入する場合も、携帯電話の本体価格の5%のライセンス料をクアルコムに支払わなければならない。クアルコム製のチップは2%引きとなる。例えば、宏達国際電子(HTC)が本体価格1万5,000元のスマホを作る場合、クアルコムのチップが900元、聯発科技(メディアテック)のチップが600元であったとしても、特許使用料がそれぞれ450元、750元かかり、チップ購入費用はいずれも1,350元で同額となる。このため、クアルコム以外の半導体メーカーは競争に不利な状況だ。
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