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工業団地が開発過剰、東京ドーム200個分が未利用


ニュース その他分野 作成日:2017年11月2日_記事番号:T00073712

工業団地が開発過剰、東京ドーム200個分が未利用

 台湾の工業団地で、面積5万1,196ヘクタールのうち931.2ヘクタールが未使用のままとなっていることが蘋果日報の調査で分かった。東京ドーム約200個分だ。県市別では台南市、屏東県、彰化県の順に未使用区画が多く、宜蘭科学園区(宜科)に至っては95%が空き地で、まるで緑地公園となっている。各県市政府の開発競争で、ニーズに合わない工業団地が生み出され、市民の血税が浪費されている。

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 中央政府、地方政府や企業が整備した工業団地は全22県市に249カ所あり、面積は1999年の2万9,024ヘクタールから1.76倍に拡大した。経済部工業局と各県市政府が開設した工業団地の未使用区画は747ヘクタールで、科技部による新竹科学工業園区(竹科)などの科学園区の184.2ヘクタールを合わせると、931.2ヘクタールに上る。県市別の未使用区画は、▽台南市、133.67ヘクタール▽屏東県、123ヘクタール▽彰化県、119.39ヘクタール──の順だ。

立地に問題

 宜蘭科学園区は面積70ヘクタールで、科技部が81億台湾元(約310億円)を投じて、12年かけて開発した。地元住民代表の康思源氏は、宜科は東部のシリコンバレーをうたい、ゲーム会社やゲームアプリ開発会社などを誘致する計画だったが、交通の便が悪く、生活環境が良くないので、台北市の南港軟体工業園区(南港ソフトウエアパーク)と競争できるわけがなく、企業の進出意欲は非常に低いと指摘した。その上、宜蘭県は給与水準も低く、人材を呼び込むこともできないと語った。

 宜科を管轄する竹科管理局の許増如副局長は、宜科は2年前に進出企業の募集を始めたところで、8社の進出が決まっており、20年契約で賃料は1坪当たり20元と安く、将来IT(情報技術)産業の重要拠点になると述べた。一方、南港ソフトウエアパークは賃料が高く、グーグルやフェイスブック(FB)などグローバル企業に適していると、すみ分けを強調した。

 タイヤ大手、建大工業(KENDA)の楊銀明董事長は、彰化浜海工業区(彰浜工業区)は海に近く、タイヤのねじがさびるので同社には適していない上、面積も狭すぎると指摘した。生産額100億元規模の工場を台湾に残したいが、適した用地がないので、ベトナムで探していると述べた。

政府と企業の投機対象に?

 工業団地の用地を取得したのに工場を建てず、利用しないままのケースも少なくない。めっき鋼材大手、燁輝企業(YP)は屏東県の屏南工業区で用地28.9ヘクタールを11年間放置。合成繊維メーカーの中国人造繊維(CMFC)は雲林科技工業区の用地20.1ヘクタールを10年間放置している。

 一方、屏南工業区の用地価格は1坪当たり3万1,000元で13年より10%上昇、雲林科技工業区は7万元と2倍になった。桃園環保科技園区は9万5,000元と13年より2.88倍に上昇しており、20年余り前に1ヘクタール220万元だった農地が2億4,000万元に膨れ上がった計算だ。

 桃園市の農業従事者は、親が残してくれた農地を奪われ、工業団地になっても利用されず、雑草が生い茂っているだけで、政府の土地開発は金儲けが目的ではないかと語った。

 政治大学地政学系の林左裕教授は、地方政府は工業団地の用地売却による利ざやを財源としていると指摘した。

 また、蘋果日報が土地の取引記録を確認したところ、2年ごとに土地の所有者が代わっているケースが散見された。ある企業関係者は、土地転がしを政府に隠すためだと明かした。

【図】