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裁判官が法廷で倒れる、背景に過酷な勤務実態


ニュース 社会 作成日:2017年11月14日_記事番号:T00073940

裁判官が法廷で倒れる、背景に過酷な勤務実態

 彰化地方法院(地方裁判所)で10日、開廷中に裁判官が脳梗塞で倒れ、救急車で搬送された。背景には訴訟件数に対し裁判官1人当たりの業務量が増え過ぎている実態があるようだ。

 彰化地裁に勤務する鮑慧忠裁判官(45)は10日午前、麻薬事件に関する裁判の開廷中、突然、顔面蒼白(そうはく)となって全身から汗を吹き出し、ろれつが回らない状態に陥った後、いすにぐったりと座り込んだまま動かなくなった。

 これを見た法廷警備員が急きょ救急車を呼び、鮑裁判官はすぐに近くの病院に運ばれた。医師によって脳梗塞と診断された後、さらに別の大型病院へと運ばれ、血栓を取り除く手術が行われた。その結果、意識を取り戻したものの、今もなお、集中治療室で経過観察が続けられているという。

 今回のケースを受け、多くの裁判所関係者から、地裁の裁判官は限度を超える量の裁判を担当させられることが常態化しているとの指摘が上がっている。にもかかわらず人手の補充はなされず、一方で期限通りの結審が要求されるため、裁判官は息をつく暇もない忙しさだという。

 実際、倒れた鮑裁判官も、深夜まで残業を繰り返していた上、台中市から通勤していたこともあり、毎日の睡眠時間は4~5時間だった。

 司法院の統計によると、同院に所属する裁判官の数は2,554人だが、裁判所が受理する訴状は年間157万件に達し、裁判官1人が1カ月間に手掛ける件数は刑事担当で平均60.85件、民事担当で66.37件に上る。このほか裁判官は毎月180件もの案件についての裁定を行う必要があり、1週間の平均勤務時間が60時間を超えることから、民間司法改革基金会(司改会)からも業務量過多が指摘されていた。

 こうした現状に対し司法院の呂太郎秘書長は、作成に長い時間を要する判決書の簡略化、略式裁判の適用範囲拡大を含む法改正を検討していると説明。また調停や和解、仲裁など訴訟以外の手段の活用促進を図る方針だ。

 鮑裁判官は2009年に「優良裁判官」として表彰を受けるなど高い評価を得ており、責任感が強く、業務を人任せにすることを嫌っていたという。彼のような裁判官を失うことは社会にとって大きな損失となるため、早急な体制改革が求められる。