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アパレル受託生産が一転不振、高成長回復は困難か


ニュース その他製造 作成日:2017年12月4日_記事番号:T00074279

アパレル受託生産が一転不振、高成長回復は困難か

 過去5年にわたり年間20~30%の売上成長を遂げてきたアパレル受託生産各社が、今年は軒並み2桁減益に見舞われている。ファストファッション人気が一段落したこと、大手ブランドによる在庫過多を受けての発注削減、生産拠点である東南アジアの人件費上昇などが要因で、成長を取り戻したとしても、これまでのようなハイペースは難しいとの指摘が出ている。4日付工商時報が報じた。

/date/2017/12/04/00Top_2.jpg 業界大手の今年の年初から第3四半期までの利益は、儒鴻企業(エクラット・テキスタイル)が19億8,300万台湾元(約74億円)で前年同期比13.8%減、聚陽実業(マカロット・インダストリアル)が10億1,000万元で23.3%減、広越企業(QVE)が5億5,300万元で19.43%減、銘旺実業(ヘイカーズ・エンタープライズ)が3,900万元で67.81%減と軒並み2桁減となっている。アパレル受託生産が業務に占める割合が高いほど、営業利益率の低下が顕著な傾向にある。

 台湾勢は機能性衣料の世界市場でシェア7割を占める優位を持つ。しかし、ファストファッションの成長に陰りが出て、スポーツ用品のアンダーアーマーや米大手アパレルチェーンのフット・ロッカーは上半期に赤字を計上するなど業績を落とした。大手服飾ブランド、販売業者はこの1年、拡大した在庫の整理に追われ、台湾勢はこの影響で受注ペースが落ちている。エクラットは「ブランド側は確実な需要分のみを発注するようになった」と現状を説明する。ただ一方で「顧客は将来の計画に非常に積極的だ」とも付け加えた。

労働・材料コストが上昇

 台湾アパレル各社は、主にベトナム、ミャンマー、カンボジアなどに生産工場を置いているが、労働者の賃金は年々上昇しており、カンボジアは来年、最低賃金を173米ドルへと今年の157米ドルから10.2%引き上げる。また、最近2年は材料の生地価格が上昇し、労働コストの増大とともに頭の痛い問題となっている。

 さらにネットショッピングの勢力拡大、消費市場の縮小に伴う発注減、中国・韓国メーカーの台頭といった要因から、証券会社は、台湾業界は今後増収幅を縮小させるとみている。ただ、製品のさらなる高付加価値化、生産工程と管理効率の向上、カスタマイズ製品の割合拡大などによって、売上高、利益の2桁増は依然可能とみている。

エクラット、新工場見合わせ

 エクラットは売上全体のうちアパレル受託生産が66.2%、ニット生地が33.8%を占める。アパレル受託生産は競争が激しく、成長にも限りがあるとみられることから、今後3年は新工場の設置を見合わせる方針だ。一方で、ハイエンド生地の生産割合を高めて、コスト削減と利益率向上を図る構えだ。このほど開発したコンピューター化ジャカード素材は粗利益の2割向上が見込めるため、来年は生産を拡大する。また、2億元を投じて設立した「創新研発センター」を通じて、新市場、新顧客、新商品の開拓するほか、バリューチェーンの垂直統合推進によって、顧客に競争力のある調達価格を提供し、売上高と利益の成長を図る方向だ。

 QVEは、ダウンジャケットの受託生産に偏り過ぎていたことから、この1~2年は欧州や中東での企業買収・出資を通じて高付加価値製品の割合を高めるとともに、ニットアパレル分野に進出した。同社は、こうした措置はミッド・ハイエンド服飾市場でのシェア拡大と生産コスト低減に有益だと説明した。

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