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日本時代の官舎、保存めぐり議論も


ニュース 社会 作成日:2017年12月11日_記事番号:T00074432

日本時代の官舎、保存めぐり議論も

 台湾では近年、日本統治時代に各地に建てられた官舎を歴史的建造物に指定し、保存する動きが活発となっており、観光地化されて多くの見学者を集めている場所もある。しかし一方で、歴史的、文化的価値にかかわらず、日本時代に建てられたものであれば何でも残そうとする風潮により、「都市の再開発の妨げとなる」「次世代に重い維持費の負担を残すことになる」など問題点を指摘する声も上がっている。

 宜蘭市では、かつて日本時代に農林学校校長の住居として利用された住宅が、修復が施された上で「宜蘭文学館」として一般公開されている。中華電信が俳優の金城武を起用したCMのロケ地となったこともあって、一時は入館待ちの行列ができるほどの人出でにぎわった。

 また1914年に台湾総督府営林局の娯楽施設などとして嘉義市に建てられた建造物群も、05年に歴史的建築物として古蹟に指定され、現在は当時の街並みを再現したテーマパーク「檜意森活村(通称ヒノキ村)」として人気を博している。

 こうした日本時代の建築物は現在も台湾全土に数多く残されており、観光資源としての再利用の成功が注目を集めるや、他の各地でも古蹟に登録しようとする動きが相次いでいる。

 こうした建築物の取り壊し計画を追跡し、中止を求める市民グループも現れており、彰化県では現存の旧官舎群8カ所のうち6カ所が古蹟に指定された。残りの2カ所については、市民や学生などの抗議を受けて取り壊し計画が一時中止となったものの、一部のみを保存して再開発を進めたい所有者側と、より完全な形での保存を主張する市民との間で議論が平行線をたどっている。

 ただ古蹟に指定された6カ所について、一部は歴史館などとして生まれ変わったものの、修復や運営を引き受ける業者が見つからず、再利用が進んでいないケースも存在する。

 こうした状況に魏明谷彰化県長は「地方の歴史との関連性や文化、芸術的なバックグラウンドを問わず、古い建物であれば何でも残そうというのでは、歴史や文化的特色が失われるだけでなく、都市の再開発も阻害する」と疑問視。また、周辺に見るべきもののない旧官舎は、観光客に取って魅力的ではなく、保存する意義は低いとの考えを示している。

 同県の地方史研究者の蒋敏全氏も、台湾人はブームに流されやすい傾向があるが、十分に価値を調査した上で保存しなければ、市民の思い入れがなく、誰も利用しない施設が残されることになると警鐘を鳴らしている。