ニュース 社会 作成日:2018年5月15日_記事番号:T00077035
5月10日から台湾で放送開始となっていたテレビドラマ『智子之心』は、太平洋戦争中に日本軍の従軍看護師として救護活動に従事した実在の台湾人女性、林智恵さん(91)をモデルに制作された作品だが、放送開始後、中国で「日本軍を美化している」などと強い批判が巻き起こる中、第3話以降の放送が急きょ中止となった。
『智子之心』の一場面より。日本が関係する20世紀前半をめぐって、台湾には中国とは異なる独自の歴史観が存在する。そのことを多くの人に知ってもらうためにも、『智子之心』には放送を続けてほしかった(15日=中央社)
『智子之心』は台湾最大の仏教系慈善団体「仏教慈済慈善事業基金会(慈済基金会)」が運営するテレビ局、大愛電視が製作したドラマで、日本統治時代に台南市の裕福な家庭に生まれながら18歳の時に家族の反対を押し切り香港や広州などの戦地へ向かい、看護師として任務に当たった林さんを主人公にした物語だ。
同局ドラマチャンネル「大愛劇場」で5月10日から6月13日にかけて計35話が放送される予定だったが、第1話が放送された後、中国のメディアやネットユーザーから「日本にこびている」、「日本軍の中国侵略を美化している」などと批判が上がった他、中国国務院台湾事務弁公室(国台弁)が慈済基金会の幹部に面会を求めたとの観測も伝えられた。
大愛電視は11日の第2話放送後、同作品の放送中止を決定。12日から別のドラマに差し替えられた。これについて同局メディア発展部の欧宏瑜経理は、「同作品には確かに誤解を招き、論議を巻き起こす可能性のある場面が描かれており、これ以上問題を大きくしないために中止を決めた」と説明した。
中止は中国側の批判が理由かとの質問に対しては「無関係」と強調したが、台湾では、慈済基金会は中国に支部を開設しているため、その活動に影響が及ぶことを懸念したとの見方が出ている。
なお『智子之心』の監督を務めた楼一安氏は今回の放送中止について「腹立たしく、悲しい」と語り、大愛電視は創作者に対する敬意を欠いていると批判。同業者に「同局とは仕事をしない方がよい」と呼び掛けた。
清華大学社会学研究所の陳明祺所長は、中国の検閲行為は国境を超えて外部の企業、個人に圧力を掛けるようになっていると指摘。『智子之心』の放送中止については人権と言論の自由を守るべきなのに、自粛するのは既に自由が失われていることを意味すると批判した。
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