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台鉄運転士の女性比率1%、男社会に新たな風


ニュース 社会 作成日:2019年8月30日_記事番号:T00085517

台鉄運転士の女性比率1%、男社会に新たな風

 女性の社会進出が進む中、いまだに職場の「男社会」を解消できていないと感じることはないだろうか。台湾鉄路(台鉄)もそんな職場の一つだ。今年、3人の女性運転士候補が訓練に加わったものの、運転士の男女比は99対1と依然大きな開きがある。ただ、人数は少ないながらも、彼女たちの加入は組織に新たな風を吹き込んでいるようだ。

 台鉄の運転士は、日本統治時代の前身組織から100年以上、男性だけで占められてきた。初の女性運転士が誕生したのは2012年とつい最近のこと。それから7年、女性運転士は1,360人中14人に増加した。今年7月に新たに運転士候補となった女性3人が10月初めに訓練を修了すれば、17人体制となる。

 女性運転士の中で一番若い詹雅婷さん(27)は、父親も台鉄職員だ。女性の方が運行安全上の気配りが利くとの確信から、女性運転士の増加は乗客にも台鉄にも良いことと考えている。訓練期間中には、乗客がプラットフォームから落ちる場面を記録した列車用ドライブレコーダーの映像や、刑事鑑定記録や陳述書などにも触れた。怖さを感じたが、冷静になると、交通機関として避けて通れない死傷事故に対する心構えができた。

 張凱綸さんはアラフォーのシングルマザー。家族の支えがあってこそ、運転士の仕事を続けられると語った。最初は運務処の配属だったが、乗車券販売窓口での勤務を経験したことで、輸送業務を担当したい気持ちが芽生えた。張さんは、台鉄は挑戦の機会が与えられる職場で、女性運転士が増えれば黒字化も夢ではないと語る。18年10月の特急列車プユマ(普悠瑪)号脱線事故は衝撃的だったが、安全への思いを新たに、重要な教訓として生かしている。今後も、安全運行を最優先にしつつ、機会があれば昇進を狙うつもりだ。

 しかし、そんな意欲ある女性運転士たちの前に立ちはだかるのが、男社会を前提としたトイレや宿舎などハードウエアの問題だ。労働組合によると、男性は乗務中のトイレをビニール袋で代用することもあるという。女性は乗務前と途中駅での停車時間中にトイレを利用するしかないが、以前よりは環境の整備が進んでいる。

 より深刻なのは宿舎の問題で、中には女性運転士の宿舎に侵入する男性同僚もいるという。労働組合は、以前は目隠しとなる仕切りは多くなかったが、現在は男女の宿舎間に仕切りを設けたり、監視カメラの設置を進めるなどの対策を講じていると説明した。ただ、女性運転士の一部からは、盗撮を防ぐための信号検知機を導入して、より安心して休息できるようにしてほしいとの声も上がっている。

 台鉄は、女性運転士の増加を受け、既に一部宿舎をワンルームに改装した他、今後新設する宿舎は全室ワンルームで設計する方針だ。女性運転士の吹き込んだ新たな風が、台鉄組織の改善につながっている。