ニュース 電子 作成日:2020年8月14日_記事番号:T00091566
アップルのスマートフォンiPhoneなど電子機器の受託生産大手、和碩聯合科技(ペガトロン)は13日、金属筐体(きょうたい)を手掛ける子会社、鎧勝控股(ケーステック・ホールディングス)の全流通株式を145億台湾元(約530億円)を投じて取得し、完全子会社化すると発表した。市場で伝えられていた、中国の受託生産大手の立訊精密工業(ラックスシェア・プレシジョン・インダストリー)によるケーステック買収はひとまずなくなった。ラックスシェアがiPhone組み立てに参入するとみられる中、ペガトロンには垂直統合により、インドなど中国以外向けのiPhone受注を拡大する狙いがある。14日付経済日報などが報じた。
ペガトロンの廖総経理兼執行長(左3)、童董事長(左2)。程ペガトロン副董事長兼ケーステック董事長(左1)は、「天の時、地の利、人の和」と条件が合い、経営に利するのであればと提携に含みを残した(13日=中央社)
関連議案は9月30日に開かれる両社の臨時株主総会で承認される予定。基準日は2021年2月26日で、ケーステックは上場廃止となる。取得価格は1株87.5元、プレミアムは21.4%。
3社提携を否定
ラックスシェアは先ごろ、台湾の同業の緯創資通(ウィストロン)からの中国・江蘇省昆山にあるiPhone組立工場取得が発表され、その後、ペガトロンとウィストロンが相次いでラックスシェア株を取得したことから、市場では3社が共同で最大手の鴻海精密工業のアップル受注を奪う構えと観測されていた。ペガトロンの童子賢董事長は同日、「スリー・アイズ」は存在しないと市場の観測を初めて否定した。
童董事長は完全子会社化について、両社が個別の経営主体だったことで、人員配置やリソース統合で法的な制限があったが、目まぐるしく外部環境が変化する中で、今後は市場や顧客の需要への素早い対応が可能になると説明した。廖賜政総経理兼執行長は、ペガトロンがベトナムやインドに工場を設置する際、顧客がケーステックの同行を求めることがあっても「家族であれば、行くと一言言えば済む」と例えた。
ペガトロンはこれまでプラスチック筐体が中心だったが、モノのインターネット(IoT)や自動車分野で金属筐体の採用が進んでおり、完全子会社化により筐体分野を強化する構えだ。
資金力の後ろ盾に
ケーステックは、iPhone向け筐体受注獲得で迫られる、資金負担の重い自動化設備への投資のほか、新規業務や変化するモジュール技術への対応が可能となる。程建中ペガトロン副董事長兼ケーステック董事長は、ケーステックは▽浙江省嘉善▽江蘇省塩城▽上海市松江──に拠点があるが、一部設備が老朽化しているため、完全子会社化後に更新を行う考えを示した。
ケーステックは今年第2四半期は純利益7億8,300万元と四半期ベースで黒字だったが、過去2年は通年赤字が続いていた。童董事長は、統合の効果が出るのは2~3年後と見込んでいる。
ラックスシェアとの提携に含み
なお、程ペガトロン副董事長兼ケーステック董事長は、ラックスシェアとの提携観測について、サプライチェーンでは競合関係以外に川上川下の関係があると指摘した上で、可能性を排除しないと述べた。業界関係者は、ペガトロンによるケーステックの素早い上場廃止決断で、ラックスシェアとの提携可能性がかえって広がると分析した。
米中対立が深まる中、中国の紅色供給網(レッドサプライチェーン)の指標的な企業であるラックスシェアは垂直統合の推進によりアップル受注拡大を狙っているとみられていた。業界関係者は、ペガトロンのケーステック完全子会社化は必ずしも障害とはならず、他の受託生産大手にとってラックスシェアが長期的に脅威であることに変わりはないと分析した。
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